運動能力向上させる遺伝子特定 岡山大病院医師ら、腱成長に関与

中道亮医師(左)と浅原弘嗣教授

マウスが跳ぶ様子を撮影した連続写真。遺伝子変異を持つとジャンプ力は飛躍的に向上した(中道医師提供)

 岡山大病院の中道亮医師(整形外科学)らの研究グループは、ジャンプ力や走力といった運動能力を大幅に向上させる遺伝子を特定した。筋肉と骨をつないで体を動かす組織「腱(けん)」の成長に関与していることを実験で突き止めた。高齢者の運動機能を回復させる薬剤開発などにつながる成果として期待される。

 東京医科歯科大の浅原弘嗣教授(分子生物学・整形外科学)=岡山大医学部出身=や米スクリプス研究所などとの共同研究。

 中道医師らは、同研究所が2010年に発見しノーベル医学生理学賞を受賞した、圧力を感じて物の手触りを神経に伝える遺伝子「PIEZO(ピエゾ)1」に着目。この遺伝子の変異を持つ人はカリブ海のジャマイカや西アフリカ系に多く、優れた陸上選手を多く輩出していることから、運動機能に何らかの影響を及ぼしているのではないかと仮定し、マウス実験を行った。

 その結果、変異を持つマウスは通常のマウスと比べジャンプ力が1・7倍になり、走る速度も約1割向上した。腱を調べると太く成長している上、しなやかに伸びるような特性を持っていたという。

 さらに、限られた人数での解析にはなるものの、ジャマイカ人で変異を持っている割合は、陸上選手の方が一般の人と比べ高いことも分かった。

 研究グループは「PIEZO1に変異があることで、腱の成長を促す別の遺伝子の働きが強まると考えられる」と分析する。

 中道医師はスポーツ選手のドーピングに悪用される懸念もあり、対策が必要との認識を示しながらも、「先進国を中心に高齢化は一層と進行する。運動機能が落ちた高齢者の腱を強化するような薬を開発したい」と話している。

(2022年11月28日 更新)

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