(3)たかが頭痛から、されど頭痛へ~頭痛診療のポイント~ 岡山旭東病院脳神経内科部長 北山通朗

北山通朗氏

 頭痛、どんなに健康でも一生涯一度も自覚したことがないという人はいないのではないでしょうか。それゆえ、頭痛でしんどくても人目を気にして仕事や学校を休むことをためらう方も多いと思います。今回は、そんな頭痛について大事なポイントをお伝えします。

 (1)二次性頭痛に気をつけて

 頭痛にはさまざまな原因がありますが、まず一次性頭痛と二次性頭痛に分類されます。

 一次性頭痛は、何らかの障害を原因としない頭痛のことで、片頭痛、緊張型頭痛などがあります。

 二次性頭痛は何らかの原因(障害)によって引き起こされ、脳出血、くも膜下出血、椎骨動脈解離等の脳血管障害、頭部外傷、薬物(鎮痛薬の飲みすぎや普段の内服薬)など原因はさまざまです。これらには緊急に治療を開始する必要のある頭痛が含まれるため、頭痛診療の第一歩は、二次性頭痛かどうかを鑑別することから始まります。

 初めて頭痛を自覚する方はもちろん、頭痛持ちの方も油断せず、表1の特徴を感じた時は、医療機関を受診しましょう。特に高齢になると二次性頭痛の頻度が増えるため、気になったら受診をしてください。また、内服薬をたくさん使用されている方は、一度主治医の先生に相談してみてはいかがでしょうか。

 (2)片頭痛と緊張型頭痛 誤解していませんか?

 さて、二次性頭痛が否定されるとまずは安心ですが、一次性頭痛にもさまざまな頭痛があり、その多くは片頭痛と緊張型頭痛です=表2

 ポイントは、片頭痛は決して片側性だけではなく、頭重感がすることもあり、日常動作(歩行、階段昇降)等で症状が強くなるということです。首、肩こり、頭が重たいということで緊張型頭痛と思ったり診断されたりしていませんか?

 (3)薬剤の使用過多による頭痛に注意(特に鎮痛薬)

 慢性的な頭痛や痛みに対する不安から頭痛がないのに薬を服用すると、おのずと鎮痛薬の量が増えてしまいます。片頭痛や緊張型頭痛の方が、過剰に治療薬を使用すると、頭痛が連日のようにおこるようになります。これは薬剤の使用過多による頭痛で、薬を飲むことでさらにひどくなり、また薬を飲むという悪循環に陥ります。このことを避けるためにも、このような方は早めに頭痛専門医に相談してみてください。

 頭痛(特に片頭痛)は幅広い年代で発症し、日常生活への疾病負担の大きい神経疾患です。生活の質の低下だけでなく、多大な経済的損失をもたらしているとの報告もあります。そのため“たかが頭痛”ではなく“されど頭痛”と意識を変える必要があります。特に片頭痛治療では最近新たな治療薬が多数適応になりました。生活の質を向上させるために、なかなか症状が改善しない時は気軽に脳神経内科を受診してみてください。

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 岡山旭東病院(086―276―3231)

 きたやま・みちお 鳥取大学医学部卒。同大学脳神経内科助教を経て2013年4月より岡山旭東病院勤務、20年1月より現職。日本神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医。

(2022年12月05日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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