(3)慢性腎臓病(CKD)をトータルにサポートする 国立病院機構岡山医療センター副統括診療部長・腎臓内科医長 太田康介

太田康介氏

 ■腎臓病は気づきにくい

 腎臓は静かな働き者です。尿をつくり、血圧を調節し、血液のバランス(イオンとPH)や赤血球の数を保ちます。ところがいつの間にか腎臓病を患い、悪化していることがあります。早期発見に、健康診断や検査を受けましょう。たんぱく尿や、血液検査にてGFR値(腎臓の働きを示す数字)が60未満なら腎臓内科受診を勧めます。

 腎臓病の治療にはもとの疾患を診断することが大事です=。病歴や尿・血液・画像検査を総合し、必要があれば腎生検(細い針で腎臓の標本を採取する検査)を行います。その上でお薬や食事生活指導など適切な診断と治療を提案・実行します。当科では十分な体制のもとで診療します。

 ■慢性腎臓病

 新たな国民病として注目されているのは慢性腎臓病(CKD)です。CKDはたんぱく尿や血尿が続くか、腎臓の働きが半分以下(GFR値60未満)の場合などに診断されます。もとの腎臓病は問いません。10~30年ぐらいで腎臓が全く働かなくなる場合があります。治療法がないといわれていましたが現在は有望な治療法が実施されています。

 十分な血圧の治療が重要で、有効な降圧剤を用い血圧の目標値を維持します。塩分・水分が体内に多い場合は利尿薬が有用で、最近脚光を浴びているSGLT2阻害薬も効果的です。血圧以外には脂質異常症・尿酸の治療、糖尿病患者では血糖治療が肝心です。貧血やカルシウム・リン代謝の治療も行います。

 食事療法は、食塩摂取の適正化(1日6グラム以下)と、たんぱく質やカリウム摂取を制限する場合があります。適度な運動は効果的です。

 当院では腎臓専門医が栄養士・看護師・薬剤師と協力し、かかりつけ医と連携して適切な治療を提供します。

 ■腎代替療法と療法選択

 CKDが悪化し生命の維持が難しくなると、多くの患者さんには腎臓の代わりをする治療(腎代替療法)を選択します。腎代替療法==には腎移植と透析(腹膜透析=PDと血液透析=HD)があります。

 腎代替療法の詳細については、ここで述べる余裕はありません。日本腎臓学会や日本透析医学会などが編集した「腎不全 治療選択とその実際2022」をインターネットで検索してみてください。分かりやすく説明しています。

 当院では、患者さんとご家族に看護師と医師が腎代替療法を説明し(療法選択外来)、ご本人に合う方法を一緒に考え、決めていきます。

 当院はPD、HD(入院のみ)、腎移植の全てを行う施設です。保険診療上、他の施設との協力や移植、在宅透析治療の推進などが評価されています。

 ■腎臓病患者さんとともに歩む

 腎臓病は長期間にわたる治療や療養が必要です。腎臓病でお困りのことがありましたら当院にご相談ください。

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 国立病院機構岡山医療センター(086―294―9911)

 おおた・こうすけ 岡山一宮高校、岡山大学医学部卒、岡山大学大学院医学研究科修了。岡山大学医学部附属病院助手(途中米国ノースウエスタン大学)から、1999年現施設に着任し2021年より現職。専門は腎臓病全般、透析医療、腎移植、高血圧、リウマチ膠原(こうげん)病。

(2022年12月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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