コロナ病床使用率7割で高止まり 岡山県内、手術延期や救急制限も

防護服にゴーグルを装着して治療に向かう倉敷中央病院の医師。「立入禁止」の張り紙がされた扉の向こう側は中等症患者が入院するレッドゾーン=10日

 新型コロナウイルスの流行「第8波」が猛威を振るう中、岡山県内のコロナ患者向け病床(600床)は、昨年12月下旬から7割前後が埋まる日が続いている。9日午後3時時点の病床使用率(速報値)は全体が69・7%、重症用が22・4%。一部の医療機関では、予定されていた他疾患の患者の入院や手術の延期だけでなく、救急搬送の受け入れ制限を余儀なくされるなど、通常診療にも大きな影響を及ぼしている。

 「非常に厳しい状況。工夫を凝らしながら踏ん張るしかない」

 倉敷中央病院(倉敷市)臨床検査・感染症科の橋本徹主任部長は、崩壊が危惧される地域医療を守り抜く覚悟をにじませた。

 同病院がコロナ患者向けに設けている病床は重症用4床、中等症用16床の計20床だが、10日時点の入院患者は32人。個室の一般病床を転用して急場をしのぐ。

 コロナ病床が満床を大きく超え始めたのは昨年12月中旬から。感染または濃厚接触者となって欠勤する医療従事者も増えて人手が不足。不急の手術や入院を制限しているという。「第8波のピークはまだ見えない。このまま収束しなければ、救急の受け入れを重症患者だけにしなければならなくなる」と橋本主任部長。

 岡山済生会総合病院(岡山市)のコロナ病床は25床(重症用1、中等症用24)。10日時点の入院は18人で、余裕があるようにも見えるが、7日に一般病棟の入院患者2人がコロナに感染。その対応に、医師や看護師の欠勤も加わり、9日までの3日間で計63件の救急搬送を断らざるを得なかった。川崎医科大付属病院(倉敷市)もスタッフの感染などで、救急搬送の制限や手術の延期などに追い込まれている。

 県内の全体の病床使用率は昨年11月中旬から徐々に上昇し始め、12月17日には60・2%に。同20日に県は「医療ひっ迫警報」を発令し、県民に感染対策の徹底を呼びかけた。

 だが、状況は改善せず、同使用率は同31日に71・0%まで悪化。年が明けても感染拡大は止まらず、1月7日には1日当たりで過去最多となる5332人の新規感染が確認された。この間の同使用率は60%台後半から70%台前半で高止まりしており、その出口はいまだ見えない。

 計22床(重症用4、中等症用18)の津山中央病院(津山市)では9日時点で27人を受け入れている。満床を超える状況は12月下旬から続いており、一般の病床を転用して対応している。

 岡山市立市民病院(同市)は計32床(重症用4、中等症用28)。10日時点でコロナ患者27人に加え、治癒したものの転院先が見つからない基礎疾患がある13人が入院している。

 転院先の調整が困難になっている原因は医療機関や高齢者施設で多発しているコロナのクラスター(感染者集団)。「先方もコロナ対応に追われ、余裕を失っている。収束を待つしか手がない状況」。今城健二副院長は危機感を募らせる。

 3年近くにも及ぶコロナとの闘いで、県内の医療従事者には疲労の色が浮かぶ。

 県南の急性期病院のある医師は言う。「『ウィズコロナ』で社会経済活動が活発化しているが、医療提供体制はほとんど変わっていない。一人一人が意識ある行動を取り、感染拡大を抑えなければ、多くの人が医療にアクセスできない状態に陥ってしまうだろう」

(2023年01月10日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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