病床使用率「実質100%超」 医療者欠勤で受け入れ制限恒常化

新型コロナの感染状況を説明する伊原木知事(右)と松山会長

 新型コロナウイルス流行「第8波」が猛威を振るい、コロナ患者向けの病床使用率が70%前後で推移している岡山県で、医療現場のマンパワー不足から残る病床への受け入れが制限されている状況が12日、県の対策本部会議で示された。感染や濃厚接触に伴って欠勤している医療従事者が約500人に上ることが主な要因。やむなく一般病床を転用するケースも増え、県幹部は「数字以上に厳しい状況だ」と危機感をあらわにする。

 「実質的には病床使用率が100%を超えていると解釈できる」。12日の対策本部会議で伊原木隆太知事はこう強調した。

 県内のコロナ病床は11日現在、確保している600床に対して425人が入院し、使用率は70・8%。ただ、会議で県が示したデータでは他にコロナ患者295人を一般病床で受け入れており、トータルの入院者は720人に上る計算だ。

 背景にあるのは医療現場の人手不足だ。県が医療機関からの報告を集計したところ、5日現在、医師と看護師の約500人がコロナ感染もしくは濃厚接触を理由に欠勤しており、コロナ病床への入院数を絞らざるを得ないケースが増えているという。徳本史郎保健福祉部長は「コロナ病床を確保しても、3割程度は受け入れられない状況が恒常化している」と指摘する。

 通常医療にもしわ寄せが及んでいる。県によると、医療機関から手術を含めてコロナ以外の患者の受け入れを制限せざるを得ないとの訴えが相次いでいる。救急車の到着後も搬送先が決まらない「救急搬送困難事案」も県南部を中心に増加。岡山市消防局では3週連続で過去最多を更新し、搬送完了まで約3時間を要したケースがあったという。

 県内では季節性インフルエンザも流行期に入っており、県は同時流行でピークが重なった場合、1日当たりの最大患者数がコロナ約6600人、インフル約5300人に上るとの想定を明らかにしている。

 対策本部会議では感染状況をレベル3(医療負荷増大期)に引き上げ、県民にさらなる注意を呼びかけることを決定。流行のピークを少しでも抑えたい考えだ。会議後、伊原木知事は記者団に「一人一人が気を付ければ医療現場の負担を軽減できる。そうすることが県民の命を救うことにもつながる」と語った。

(2023年01月12日 更新)

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