県内高齢者施設でクラスター多発 コロナ「第8波」 対策にも限界

昨年12月のクラスター発生時に防護服を着用して入所者のケアをする職員(県南東部の特別養護老人ホーム提供)

 岡山県内の高齢者施設で新型コロナウイルス感染の流行「第8波」によるクラスター(感染者集団)が、これまでの流行の波になかったペースで多発している。昨年11月から今月18日までの約2カ月半で497件確認され、第7波が起きていた4カ月間(昨年7月~10月)の319件を既に大きく上回る。各施設は入所者と家族らの面会を制限しているが、社会経済活動が活発化する状況では感染防止に限界があり、「ウィズコロナ」にどう対処していくか頭を悩ませている。

 「第7波とは比べものにならない」

 昨年12月から今月初めにかけてクラスターが起きた県南東部の特別養護老人ホーム(特養)の男性施設長(49)は疲れた様子で言う。

 昨年夏のクラスターで職員8人と入所者7人だった感染者は今回、職員18人と入所者43人に大幅に増えた。感染した入所者は病院に入院できず、職員が防護服などを着用して感染防止しながらケアを続けた。系列の他施設から応援職員を派遣してもらったが、入浴やリハビリなどのサービスは休止。この間、3人の入所者が亡くなった。

 今月初めに収束したものの、「もう一度クラスターが起きたら今度は乗り切れるかどうか…」と男性施設長は不安を訴える。

 県によると、昨年11月から今月18日までに県内で判明したクラスター700件のうち7割超が特養などの高齢者施設だ。12月は243件あり、それまで月別で最も多かった昨年8月の167件を大きく上回った。1月も18日時点で132件確認されている。感染者数は把握できていないが、クラスターは5人以上でカウントされ、1件当たり10人を超えるケースも多い。

 第7波が落ち着いて以降、入所者と家族の対面での面会を再開した施設もあったが、その多くが今回、再びタブレット端末を使ったリモートでの面会などに切り替えた。ただ、ウィズコロナの動きが活発化し、職員らを通じて感染が広がるのは防ぎきれない。

 倉敷市内のある特養は今月、コロナ禍で初めてクラスターが起き、職員8人と入所者6人が感染した。これまで小まめな消毒や職員への定期的な抗原検査に加え、室温を下げずに換気できる最新の装置を多く導入、面会制限も第7波以前から続けてきた。男性施設長(47)は「本当なら職員の行動も厳しく制限したいところだが…」と漏らす。

 高齢者施設でのクラスターは面会制限の問題に加え、コロナ禍が始まってからの長期にわたる業務負担の増加や、いつも感染に注意しなければならない職員の疲弊も大きい。ここ半年で退職者が相次いだというある施設は「“災害対応”するために介護職になったのではないと訴えた職員もいた」と打ち明ける。

 県老人福祉施設協議会の赤畠耕一路理事長は「新型コロナは流行の波ごとに感染力が強まっているように思える。社会全体でウィズコロナの動きが進んでいけば、高齢者施設はむしろ感染対策を強めなければならないだろう」と話す。

(2023年01月19日 更新)

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