糖尿病患者の「足のトラブル」対応 国立病院機構岡山医療センター外来

フットケアをする看護師=岡山医療センター

天田雅文医師

倉敷市内の病院に通う糖尿病患者の足。大きなタコが見える。患者は時折、足にピリピリとした痛みやしびれを感じるという

德山彩香看護師

 糖尿病があると足のトラブルが増えてくる。足の感覚が鈍くなって傷を負っても気付きにくくなるし、傷は治りにくいので悪化しがちだ。場合によっては皮膚に潰瘍ができ、さらには皮下組織や筋肉などの組織が壊れて壊疽(えそ)を起こしかねない。糖尿病患者にとっての足の手入れの大切さについて、「フットケア外来」を開設している国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区田益)で、糖尿病・代謝内科の天田雅文医師と、ケアの経験が豊富な德山彩香看護師に話を聞いた。2月10日は日本フットケア・足病医学会が提唱する「フットケアの日」―。

小さな傷にも注意を 糖尿病・代謝内科 天田雅文医師

 ―糖尿病を患っていると、なぜ足のトラブルが起きやすいのでしょうか。

 主に二つの要因があり、血糖値が高い状態が長期間続くと、神経障害と血流障害が起きるからです。

 神経障害には陽性症状と陰性症状があります。陽性症状は、足の神経が過敏になってビリビリする感覚や正座した後のようなしびれが続いたりします。

 より症状が進むと、感覚が低下して陰性症状が現れます。通常、足の指を何かにぶつければ痛みを感じるものですが、感覚がまひして痛みを感じにくくなるのです。けがをしやすくなりますし、けがをしても気付かなくなります。

 血流障害は、動脈硬化によって血管が細くなり、血流が悪くなります。仮に深爪をして血がにじみ、そこから少しくらいばい菌が入ったとしても普通はすぐに治るものですが、糖尿病があるとなかなか治らなくなります。血流が悪いため十分な栄養素や酸素が届かず、白血球の働きも悪くなって免疫機能が落ちてしまうのです。傷が治らないまま化膿したり、潰瘍になってさらに悪化すると細胞が壊死(えし)して、足の切断に至る場合もあります。

 ―岡山医療センターの糖尿病・代謝内科の特徴は。

 基本的には、近隣の医院から紹介を受けた重症の患者さんの治療が多くを占めています。糖尿病性腎症がある場合は腎臓内科と、心臓に問題がある場合は循環器内科との併診という形をとります。ある程度症状が安定すれば、また地元の先生のところに戻っていただいています。

 ―フットケア外来ではどのような診療をしていますか。

 糖尿病の患者さんは、神経障害や下肢の血流障害、白癬(はくせん)菌感染(水虫)などのため、小さな傷であっても糖尿病性の足潰瘍や足壊疽(えそ)などに発展する可能性があります。もちろん、血糖値のコントロールが重要ですが、そのうえで、けがをしないよう予防的なケアと日常生活における療養指導を行っています。

 例えば胼胝(べんち)、いわゆるタコですね、これを放っておくと次第に厚く硬くなり、割れて傷ができて感染につながったり、内部の組織を傷めることがあります。

 われわれ内科の領域を超えるような重症の場合は、皮膚科や形成外科、整形外科、心臓血管外科と連携していますので、最も適した専門の先生に処置をお願いしています。

足に合った靴選んで 德山彩香看護師

 ―糖尿病患者の看護や、フットケア外来にも長く携わったそうですね。

 昨秋まで20年近く糖尿病の専門病棟に従事し、フットケア外来には開設時から関わりました。

 フットケア外来では、自宅で足の管理をするのが難しく、皮膚科などでの処置までは必要ないような軽症の患者さんを対象に、2~3カ月に1回くらい通院してもらっています。

 外来では、まずは足をきれいに洗いながら、衛生面や傷などの異常がないかを確認し、必要な処置を行います。多いのは、タコやウオノメを削ったり、爪水虫(爪白癬)のため分厚くなった爪を切ったりします。

 ―患者のどのようなところに注意を払っているのですか。

 診察室に入ってくるときの歩き方や、どんな靴や靴下を履いているのかに注目します。サンダル履きだったり靴下を履いていなかったりするとけがをしやすいですし、足に靴が合っていなければタコができやすくなります。

 タコを放置していると、硬くなった皮膚の内側の組織を傷めて潰瘍化することがあります。神経障害が進んでいる患者さんもいるので、大きなタコや傷ができたり、爪が紫に変色していても、ご本人は気付いていない場合があります。冬場はこたつを使うことがあるので、知らない間に低温やけどをしている患者さんもいます。

 足を洗うときは、傷の有無だけでなく、普段、足先まできちんと洗えているのかどうかも含めて観察します。指や爪の間に汚れや垢(あか)がたまっていることがあります。

 爪はスクエアカットといって、指から爪がはみ出さないくらいの長さで横に真っすぐ切ります。爪が長いとけがをしやすくなります。両角が指からはみ出さない程度であれば靴下を履いても引っかかりません。

 ―患者に心掛けてほしい、家庭でのチェックポイントは。

 自宅では、お風呂に入るタイミングなどで、足に新たな傷やあざはないか、異常はないか、しっかり観察していただくようお願いしています。足に合った、履きやすい靴を選び、靴下は、出血があれば気がつきやすいよう白っぽいものをお勧めしています。

 以前、靴下が汚れているので、家族が足をよくよく見てみたら大きな潰瘍ができていた、そんな患者さんがいらっしゃいました。その方は結局、足首から先を切断しなければならなくなりました。そうなると患者さんのQOL(生活の質)は大きく低下します。患者さん一人一人が、大事に至らないよう「足を大切に」という意識を持っていただければと思います。

(2023年02月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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