(1)前立腺がんのロボット手術 岡山済生会総合病院泌尿器科主任医長 中村あや

中村あや泌尿器科主任医長

 前立腺(ぜんりつせん)は男性の生殖器官の一部であり、膀胱(ぼうこう)の下に位置し尿道の周囲を取り囲んでいます=イラスト。前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより前立腺がんは発生します。

 前立腺がんは男性のかかるがんの中では最も多く、2019年には国立がん研究センターの統計で9万4748人が新たに罹患(りかん)しています。

 前立腺がんは初期段階では症状がほとんどなく、早期発見のためには定期的な検診が重要です。検診方法には、PSA(前立腺特異抗原)検査や直腸診があります。PSA検査では、前立腺から出る特定のタンパク質を血液中から測定し、直腸診では、医師が指で直腸を触診して前立腺の大きさや硬さなどを調べます。

 前立腺がんの治療は、根治療法としての手術療法や放射線療法、がんの進行を遅らせるホルモン療法、進行した前立腺がんに行う化学療法、積極的な治療はせずに定期的に検査を行い経過をみる方法など、がんの進行度や年齢によってさまざまです。

 その中で手術療法は、当院では最先端の医療機器である「ダヴィンチXi」を用いたロボット支援下腹腔鏡下(ふくくうきょうか)前立腺全摘除術(ロボット手術)を行っております。

 ロボット手術というと、機械が自動的に手術を行うことを想像されるかもしれませんが、そうではありません。おなかにあけた小さな穴に内視鏡や手術器械を挿入し、ロボットアームにとりつけます=写真1。そのロボットアームを医師がコンソール=写真2=に座って内視鏡の画像を見ながら操作します。

 前立腺は骨盤の一番下の深い部分にあるため、とても難しく出血も多い手術でしたが、ロボット手術という最先端手術によって、これまで届きにくかった深い部位での細かい操作も容易となり、従来の方法に比べ出血も少なく、術後の回復も早くなりました。

 前立腺がんのロボット手術は2012年より保険適用となっておりますので、今後もロボット手術は増え、よりスタンダードな手術となると予想されます。

 最後に、繰り返しとなりますが、手術療法や放射線療法で根治が可能な早期前立腺がんの発見のためには定期的な検診がとても大事です。50歳以上の男性は前立腺がん検診を受けることをお勧めします。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

 なかむら・あや 渋谷教育学園幕張高等学校、群馬大学医学部卒、岡山大学医歯薬総合研究科博士課程修了。2013年より岡山済生会総合病院勤務。日本泌尿器科学会専門医、指導医。

(2023年03月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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