「ダヴィンチ」使った直腸手術 倉敷中央病院 症例見学施設に認定 安全・確実な操作法紹介

ダヴィンチによる手術を見学する三豊総合病院の医師ら=2022年12月1日(倉敷中央病院提供)

横田満外科部長

 倉敷中央病院(倉敷市美和)は手術支援ロボット「ダヴィンチ」による直腸の手術で、メンターサイト(症例見学施設)に認定された。ダヴィンチ導入には関連学会のガイドラインに定められた一連のトレーニングが義務づけられ、メンターサイトでの手術症例見学はその一環。ロボット手術が全国的に広がる中、同病院は近隣県からの見学を受け入れ、安全で確実な操作法を紹介するなど指導的な役割を担っている。

 2021年末、ダヴィンチ製造元のインテュイティブ・サージカル社から倉敷中央病院に打診があり、同社の視察などを経て22年9月、メンターサイトに認定された。直腸領域では、中四国地方の医療機関では初めてという。同社は認定基準などは公表していないが「当社の定める基準を満たす施設を、所定の審査プロセスを経て認定した」としている。

 倉敷中央病院がダヴィンチを導入したのは14年5月で、最初は前立腺がんに対する全摘除術だった。その後、泌尿器科(前立腺や腎臓など)だけでなく外科(食道、胃、結腸、直腸、すい臓)や産婦人科(子宮など)、呼吸器外科(肺や縦隔)にも広げ、多くの領域でダヴィンチ手術を実施。21年は計258件、22年には計313件に上った。手術の増加に対応するため、22年9月には2台目のダヴィンチを導入した。

 直腸がんの手術は18年12月に始め、22年12月までの4年間で174件をこなした。

 外科部長の横田満医師(専門は下部消化管)によると、直腸は骨盤奥深くの狭いスペースに位置し、開腹手術ではほぼ見えないため手探りの作業になる。そばには膀胱(ぼうこう)や前立腺、子宮などがあり、排尿や排便、性機能に関わる神経も走っていて、各機能を温存するには繊細な作業が欠かせない。「神経を傷付けることなく、しかも腫瘍を取り残さない、必要十分な手技が求められる」と直腸手術の難しさを語る。

 その点、ロボット手術は緻密で安全な手術が実現できるとされる。高精細カメラによって高倍率の立体画像が得られ、ロボットアームは人間の手にはできない自在でスムーズな動きが可能だからという。

 ただ、ロボットならではの注意点もある。4本あるアームのセッティングでは、手術中にぶつかったりしないよう、患者の体格や手術の内容に合わせ適切に配置しなければならない。患者の術後のQOL(生活の質)を保つためには「やはり神経を傷付けないことがポイントになる」と横田医師は言う。

 昨年12月には香川県の三豊総合病院から医師や看護師、臨床工学技士の6人が訪れ、ロボット手術の手順や実際、その注意点などを学んだ。今年2月末までに岡山県内をはじめ広島や山口県などからも8件の症例見学があったという。

 横田医師は「安全にロボット手術を導入してもらうため、われわれの経験を余すところなく伝えていきたい」と話している。

(2023年03月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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