(2)むくみとリンパ浮腫について 笠岡第一病院形成外科部長 河村進

河村進氏

 むくみ(浮腫)はさまざまな原因で生じ=、下肢で認めることが多い症状です。がん治療でのリンパ節切除、がんのリンパ節転移、下肢静脈瘤によるうっ滞性浮腫では片側にみられ、それ以外は両側同時にむくみがみられます。

 リンパ管は全身の皮下組織や脂肪層を網目状に張り巡らされ、血管とは別にリンパ液(タンパク質や白血球)がリンパ管の中を流れています。このリンパ液の流れが悪くなるとリンパ管から皮膚や皮下組織にリンパ液が漏れだしてむくみが生じます。

 ■症状

 初期症状は衣類や指輪がきつくなる、手足が重く感じる、片側の手足が太く感じる、肘やひざが曲げにくいなどですが、重症化すると皮膚が脆弱(ぜいじゃく)となり皮膚に潰瘍を形成して難治性となります。また蜂窩織炎(ほうかしきえん)(皮膚皮下組織の炎症)を来しやすくなり、40度を超える高熱がみられ、むくんだ患肢がさらに赤く腫れ上がり熱を持ちます。これを繰り返すとさらにむくみが進行します。リンパ浮腫が進行すると皮膚が硬くなり、関節が曲がりにくくなるなどの症状が現れます。

 ■治療

 リンパ浮腫は一度発症すると治りにくくなりますが、軽いむくみであれば自己管理で改善が期待できます。重症化すると生活に支障を来すため、早期発見・治療が重要です。治療は圧迫療法、圧迫しての運動療法、用手的リンパドレナージ(マッサージ)を複合した治療を行います。重症者は入院して集中的に上記の治療を行います。

 重症化した場合は、余分な組織の切除や脂肪吸引、近年はリンパ管を静脈につないでリンパ液の流れをよくする手術なども全国で行われています。しかし手術を行っても100%改善することは少なく、特に重症化した浮腫は改善が見られないことが多いので、症状の軽い初期の段階で専門医の診察を受けて相談することが大切です。

 ■スキンケアと体重管理

 日頃の生活ではスキンケアと、太らないように体重を管理することが大切です。皮膚が乾燥すると、皮膚の保護機能が低下し、傷ができやすく細菌感染を起こしやすくなり、蜂窩織炎となることが多くなります。また、むくみが強くなると皮膚が硬くなりますが、それを防ぐために入浴後はローションやクリームで保湿を心がけましょう。体重が増えて皮下脂肪が多くなるとリンパ液の流れが悪くなりむくみが悪化します。

 むくみの治療は日常生活の指導から手術治療まで総合的なケアが必要となります。

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 笠岡第一病院(0865ー67ー0211)

 かわむら・すすむ 川崎医科大学卒業。同大学附属病院形成外科講師、同大学附属川崎病院形成外科医長、国立病院機構四国がんセンター特命副院長などを経て2022年4月、笠岡第一病院形成外科部長。

(2023年03月20日 更新)

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