リードレスペースメーカー 不整脈治療に利用 低い感染リスク、運動制限解消

リードレスペースメーカー

西井伸洋准教授

 不整脈の治療に使われる、カプセル型の小さなリードレスペースメーカーが保険適用になって5年が過ぎた。従来のペースメーカーは機器本体を胸の中に植え込んで、電気刺激を伝えるリード線を心臓内部に延ばして正常な拍動を維持しているが、運動がある程度制限されたり感染のリスクもあった。リードレスペースメーカーはそうした課題を解消するため開発され、使用が徐々に広がっているようだ。

 心臓は休むことなく拍動(拡張と収縮)を繰り返し、われわれの生命を維持している。心臓には心房と心室で四つの部屋があり、それぞれに適切なタイミングで電気刺激が伝わることで正確なリズムを刻んでいる。不整脈は、この電気経路に異常が生じ、拍動が早くなったり遅くなったり不規則になったりする。高齢化もあって患者は増えているという。

 岡山大学先端循環器治療学講座の西井伸洋准教授によると、不整脈のうち拍動が遅くなるのが徐脈で、血液が全身に行き渡りにくくなるので息切れやめまいを生じたり、意識を失って倒れたりすることもある。自覚症状のない人もいるが、日常生活に支障を来すような場合はペースメーカーによる治療の対象となる。

 日本不整脈デバイス工業会のホームページを見ると、年間約4万4千人が新たにペースメーカーを植え込む手術を受けている。

 従来のペースメーカーは、電子回路と電池が組み込まれた本体(5センチ四方程度、重さ約20グラム)にリード線がつながっている。本体は鎖骨の下の皮下脂肪と大胸筋の間に植え込み、リード線は静脈を通して先端を心臓内に固定する。あらかじめ心拍数を設定し、拍動数が設定を下回ると電気信号を発して心筋を動かす。

 ゴルフやテニスなど、ペースメーカーを植え込んだ側の腕を大きく動かすような運動はリード線を傷めかねず、損傷すれば取り換えたり追加したりしなければならない。傷口などから感染しやすいといったデメリットもあった。

 リードレスペースメーカー(長さ2・6センチ、重さ約2グラム)は、カプセル剤のような形と大きさで、その中に電子回路や電池も組み込まれている。釣り針のような部分で心臓内に固定する。リード線がないのでスポーツやトレーニングも可能で、感染のリスクが低いのがメリットだ。2017年9月に保険適用になった。製造元のメドトロニックによると、国内では約2万人が使用している。

 ただ、電池の寿命は10年程度とされている。「従来型は交換できるが、リードレスペースメーカーは寿命だからと言って取り出すようには設計されていない。電池が切れるころにはもう1個入れなければならない」と西井准教授。だからリードレスペースメーカーの対象は主に高齢者になると言う。

 西井准教授は「従来型、リードレス、それぞれメリット、デメリットがある。自分の症状や生活スタイルに合った治療法を主治医の先生とよく相談してほしい」と話している。

(2023年05月16日 更新)

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