(6)直腸がんのリスクと予防 現在の検査・治療法の進歩 倉敷成人病センター外科部長 瀨下賢

CTコロノグラフィー(大腸3D―CT検査)

手術支援ロボット・ダビンチ

瀨下賢氏

 先日訃報ニュースで流れた、ミュージシャンの坂本龍一さんが罹患(りかん)したのは「直腸がん」でした。

 ■直腸がんとは

 大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸の六つの部位から構成され、直腸がんは肛門に近いところにできます。

 直腸がんを含む大腸がんは、増加傾向にあるがんの一つです。大腸がんの死亡数で表すと、半世紀で約10倍。増えた要因としては食生活の変化であり、特に、動物性脂肪の摂取量の増加が、大腸がんの増加をもたらしたと考えられています。よって、予防としては、バランスの良い食事(脂(あぶら)を控える・食物繊維を積極的にとる)・禁煙・節度のある飲酒・適度な運動・適正な体型維持が効果的です。

 ■症状

 早期の直腸がんは自覚症状がほとんどありませんが、がん検診で発見、治療することで死亡率が下がることがわかっています。日本では、40歳以上の人は年に1回の便潜血検査が推奨されています。

 がんが増大してくると、(1)おなかが張る(2)細い軟便(3)排便時の痛み(4)下痢と便秘を繰り返すなどの便通障害が現れるといわれています。

 また、血便、貧血が現れることがあります。このような症状や無症状でも検診で便潜血が陽性だった場合には、放っておかないで必ず医師に相談することが大切です。

 ■検査方法

 一般的には、大腸カメラや注腸検査(バリウムと空気を肛門から注入)、腹部CT検査、骨盤MRI検査、血液(腫瘍マーカー)検査などが挙げられます。その他、当院ではCTコロノグラフィー(大腸3D―CT検査)も可能です。CTコロノグラフィーは、内視鏡カメラを大腸内に入れて検査するのではなく、マルチスライスCTを用いて体の外から大腸を撮影します。撮影した画像は本物の内視鏡カメラで大腸内をのぞいたかのように立体的な画像で映しだします。大腸カメラでの精密検査で躊躇(ちゅうちょ)している方がいらっしゃいましたら、ご相談ください。

 ■治療法

 直腸がんの治療法は、大腸カメラによる内視鏡治療、外科手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療があります。

 適切な治療法は進行度(ステージ)により異なり、患者さんの状態に合わせ複数の方法を組み合わせて行います。直腸は骨盤内の狭い空間にあり、膀胱(ぼうこう)や生殖器などの臓器、動静脈とともに排尿・性機能をつかさどる自律神経などと近接した複雑な解剖学的特性から、手術の難易度が高いといわれています。そこで近年ロボット支援下手術(ダビンチ手術)の有用性が期待されており、当院でもロボット支援下手術が可能です。

 腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術やロボット支援下手術は、手術部位をカメラで拡大して見ることができ、神経や細い血管もよく見えるため、少ない出血量で正確な手術を行うことができます。また、傷も小さいため、目立ちにくく、術後の痛みが少なく早く日常生活に戻れるなどの利点があります。

 直腸がんといっても多様な病気ですので、気になる症状のある方や精密検査をお考えの方はどうぞご遠慮なく受診ください。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)。

 せしも・けん 秋田大学医学部卒業。2022年10月から倉敷成人病センターに勤務。専門は消化器外科(特に大腸)。日本外科学会認定医・専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定取得医(消化器一般外科大腸)、消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、手術支援ロボットda Vinci執刀認定資格。

(2023年05月16日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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