全国地方独法病院協議会長就任 中島豊爾理事長に聞く

なかしま・とよじ 岡山大医学部講師など経て、1998年岡山県立岡山病院長。2007年4月から、岡山県精神科医療センター理事長。岡山大医学部卒。専門は臨床精神学。66歳。

 地方独立行政法人に移行(独法化)か、移行予定の自治体病院が昨年秋、「全国地方独法病院協議会」を設立。2007年の独法化後、大幅増収などで全国屈指の経営効率化を果たした岡山県精神科医療センター(岡山市北区鹿田本町)の中島豊爾理事長が初代会長に選ばれた。自治体病院の独法化を一層進め、運営支援に当たる活動への考えなどを聞いた。

 ―協議会の役割は。

 病院同士で戦略的経営に向けた情報交換を進めながら、自己決定・自己責任という独法化の趣旨を明確にし、移行を検討する病院に情報発信するためだ。

 ―独法化によって何が変わるのか。

 議会の承認など、運営面で自治体病院特有の制約を受けずに済む。独自判断で人事や予算を決定でき、経営の機動性、自由度が格段に高まる。医師を確保するために、思い切って給与を引き上げるといった手段も可能だ。定数条例に縛られ、医師を一人増やすだけで役所と交渉する非効率さから解放される。

 ―移行に伴い、県立岡山病院から県精神科医療センターとなったが、どのような効果があったか。

 職員数が独法化前(06年度)の175人に対し、11年度は294人に増加。この間に医師数は3倍、看護師は2倍となり、医療サービスの質も上がった。人件費が増えたにもかかわらず、患者増で医業収益が約3割アップしたため、人件費比率は74・2%と逆に約10ポイント下がっている。外部委託による業務効率化も黒字化に貢献した。一方で、入院患者の99%を1年以内に退院に向かわせ、病院に依存しないよう社会復帰を促している。

 ―職員の待遇面は。

 独法化後も従来の給与体系にのっとっているが、勤務成績を重視している。若手の抜てき制度を設け、年功序列人事は廃止した。年単位での海外研修や、賞与に反映させる人事評価制度を創設し、モチベーション向上につなげている。

 ―外部委託の活用でも成果を挙げたと聞く。

 看護補助業務で年間約3200万円、給食業務では食材の大量仕入れなどで同約800万円の節約につながった。給食部門は大規模災害が起きて県内で食材が確保できなくなっても、大手業者であれば他県から融通できる。

 ―独法化の状況は。

 全国の自治体病院は925施設あるが、独法化したのは63にとどまる。県内19の自治体病院でも当センターだけだ。岡山市は岡山操車場跡地に建設する市民病院と、せのお病院を独法化すると聞く。今後、全国の自治体病院の経営形態は地方公営企業から独法へ転換する動きが加速するとみられる。協議会を通じてさまざまなノウハウを伝え、不採算部門を担う公立病院の経営効率化を後押ししたい。

(2013年01月14日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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