(1)冠動脈ステント治療(PCI) 心臓病センター榊原病院副院長 廣畑 敦

写真1(閉塞した冠動脈)

写真2(治療後の冠動脈)

廣畑敦氏

 「人は血管とともに老いる」という言葉があります。動脈硬化は年齢とともに進行していくという例えです。加齢は誰にも止めることはできませんが、一方で動脈硬化を起こりにくくする方法はあります。それは生活習慣の改善です。

 糖尿病やコレステロール値が高い状態は生活習慣に大きく関係しています。普段の食生活に気をつけることも大事ですし、車を使わずに歩くようにしたり、階段を積極的に使ったり、あるいはフィットネスクラブで日常的に運動したりすることも有効といえます。先に発表された運動と死亡リスクの関係を調べた研究では、1週間に7・5~15メッツ(座ったままの状態を1メッツとし、身体活動の強さがその何倍に相当するかを表す単位)の運動をする人は、運動量がそのレベルに満たない人に比べて死亡リスクが31%低いことが示されています。これは、運動目的のウオーキングなら週に2時間~3時間半程度に該当します。普段から運動を心がけるようにしましょう。

 しかし、そうしていたとしても動脈硬化による病気を完全に予防することはできません。動脈硬化による一番典型的な心臓の病気が急性心筋梗塞という疾患で、心臓に栄養を送る冠動脈という血管が閉塞することによって起こります。急性心筋梗塞の典型的な症状としては「胸が締め付けられるような」あるいは「心臓に火鉢を当てられたような」激しい痛みを伴います。

 以前、急性心筋梗塞は死亡率の高い病気でした。しかし、治療方法がこの20~30年で劇的に進歩し、最近では、閉塞した冠動脈をカテーテルという細い管を使用してステントという金属の筒を入れて再開通させ、心筋の壊死を減らす「再潅流(かんりゅう)療法」を早急に行う治療が主流となっています(写真1・急性心筋梗塞で閉塞した冠動脈、写真2・ステント治療後)。

 このカテーテル治療をすぐに行うことで、急性心筋梗塞の死亡率は20年前の半分以下となっています。急性心筋梗塞になってしまった場合には一刻も早く病院に行って治療を受けることが大事といえます。また、急性心筋梗塞は日中、夜間を問わずいつでも起こる可能性がある病気です。これを前もって予測するのは難しいため、24時間365日いつでも緊急で病客を受け入れて早急に心臓カテーテル治療が行える体制が病院には必要とされます。

 心臓病センター榊原病院ではいつでもこのような病客様をお断りすることなく受け入れる体制が整っていますので、いつでもご相談いただけたらと思います。

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 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)

 ひろはた・あつし 香川県大手前丸亀高校、岡山大学医学部卒。岡山大学病院、津山中央病院、米国スタンフォード大学循環器内科などを経て2006年から心臓病センター榊原病院に勤務。19年から現職。医学博士。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

(2023年11月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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