(2)糖尿病と高齢者~知ってほしい食習慣 倉敷スイートホスピタル栄養管理科主任 後藤京子

後藤京子氏

 高齢になると、体のさまざまな機能が低下していきます。活動量の低下から筋肉量は減少し、内臓脂肪は増加します。そのような影響を受けて、糖尿病を持たれている高齢者の方は持たれていない方に比べサルコペニア(加齢による筋力低下)を来しやすく、フレイル(虚弱状態)を起こしやすいと考えられています。

 糖尿病の高齢者では年齢や生活背景、体重、身体能力に配慮した治療を考える必要があります。

 特に75歳以上の後期高齢者で普通動作の方では、身長(メートル換算)の2乗×脂満指数(BMI)22~25×30~35キロカロリーが標準的な1日の総摂取カロリーとなります。

 食事療法は主治医の指示により、個々の好みや食事習慣に合わせて行っていきます。

 ■高齢の方へ知ってほしい七つの食習慣

 (1)自分にあった適切なエネルギー量を知りましょう

 主治医から伝えられます。

 (2)野菜、海藻、キノコ類から食べましょう

 これらは食物繊維を多く含み血糖の上昇を緩やかにしてくれます。またビタミン、ミネラルも豊富です。

 (3)たんぱく質を積極的に取りましょう

 高齢になると活動量の減少、そしゃく機能の低下などさまざまな理由で食事量が減る傾向にあります。これはフレイルを進行させる原因となります。腎臓の機能の低下がない限り、たんぱく質は自分の体重1キロ当たり1・2~1・5グラムを目標に摂取しましょう=

 (4)水分はこまめに補給しましょう

 高齢になると口渇感が弱まり、水分不足になりやすい傾向があります。脱水は高血糖になるため注意が必要です。

 (5)1回の食事量が少ない方は、間食で不足の栄養を取る工夫が必要です

 主治医、管理栄養士へご相談ください。

 (6)食事の準備が難しい方は、配食弁当などの活用をお勧めします

 食事準備が難しくなると、食事回数が減る原因にもなり栄養は不足し、低栄養につながります。栄養が不足するとフレイルを進行させる他、低血糖などで転倒する原因にもなります。主治医、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士にご相談いただくことで、配食サービスや宅配弁当などの情報を知ることができます。ちなみに糖尿病性神経障害、網膜症、腎症の合併症は介護保険サービスの対象となります。

 (7)食事中にむせたり、かんだり飲み込んだりすることに不安を感じたら、主治医、管理栄養士へご相談ください

 かむ力、飲み込む力に応じた食事形態をご提案いたします。

 糖尿病の食事は制限食の印象が強いですが、高齢の方では「栄養不足」につながらないよう「しっかり食べる」ことが重要です。当院では、その人の暮らしを尊重した食生活の提案、サポートを大切にしています。公的サービスの情報も含めて「正しい食習慣の知識の普及」が、その人らしい暮らしの実現につながることを願っています。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 ごとう・きょうこ 八王子栄養専門学校卒。医療法人社団光生会平川病院栄養科、社会福祉法人山の子会山の子の家栄養部(いずれも東京都)を経て、2017年、倉敷スイートホスピタル入職。管理栄養士、日本糖尿病療養指導士、在宅訪問管理栄養士。

(2023年11月20日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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