(4)超高齢社会におけるフレイル予防 倉敷スイートホスピタル リハビリテーションセンター長 藤田慎一朗

 2022年の日本人の平均寿命は、男性81・05歳、女性87・09歳となり、前年度と比較して男性女性共に2年連続で前年度を下回りました。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID19)や心疾患、老衰などの死亡率が影響しているといわれていますが、依然として超高齢社会は続いております。そういった状況が続く中で、社会的問題となっているのがフレイルです。

 フレイルとは「Frailty(虚弱)」の日本語訳で日本老年医学会によって14年に提唱されました。高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱(ぜいじゃく)性が亢進(こうしん)し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態を指します。筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような「身体的問題」だけでなく、認知機能障害やうつなどの「精神・心理的問題」、独居や経済的困窮、閉じこもりなどの「社会的問題」を含む概念になります。

 従って、身体機能だけを診るのではなく、精神的・心理的要素や経済的・社会的要素も含めた三つの側面から総合的に診て対応をする必要があり、ADL(日常生活動作)低下や生活機能障害を防ぐ必要があります。

 フレイルを予防するために、必要な三つのポイントは「運動」「栄養」「社会参加(人とのつながり)」になります。

 内閣府から出されている高齢社会白書では、60歳以上の社会活動の状況について、60~69歳では71・9%、70歳以上では47・5%が働いているか、またはボランティア活動、地域社会活動(町内会、地域行事など)、趣味やおけいこ事を行っています。しかしながら、健康が先か行動が先か、少なくとも主観的な健康状態が「良くない」人は、社会参加率が低いことが明らかとなっています。主観的健康状態を維持するためにも、運動は不可欠であり、今よりも10分多く毎日身体を動かすことを「プラス10(テン)」=図1=という言葉で呼びかけ、具体的な方法=表1=を示した取り組みもあります。

 さらに、どのような運動が良いかに関しては、倉敷スイートホスピタルのリハビリテーションセンターが作成し、ユーチューブで公開している「フレイル・サルコペニア予防のための筋肉量コツコツ積み上げ体操」=図2=の動画を一度参考にしてみてください。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 ふじた・しんいちろう 倉敷青陵高校、宮崎リハビリテーション学院卒。三財病院(宮崎県)、倉敷広済病院を経て2012年から倉敷スイートホスピタル勤務。19年より現職。3学会合同呼吸療法認定士、地域ケア会議推進リーダー、骨粗鬆症マネジャー、日本リウマチ財団登録理学療法士。

(2023年12月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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