(7)生活の質を低下させる 下肢の動脈硬化 心臓病センター榊原病院心臓血管外科医長 吉岡祐希

吉岡祐希氏

 動脈は心臓から全身に血液を運ぶ管です。動脈は狭くなったり(狭窄(きょうさく))詰まったり(閉塞(へいそく))すると臓器に酸素や栄養を含む血液を提供できなくなり、その臓器の機能は低下してしまいます。よく知られている脳梗塞や心筋梗塞、狭心症は脳や心臓の血液が足りないことで起こる病気です。

 下肢閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により動脈が狭窄や閉塞することで、下肢への血流が悪くなる病気です。このため、歩いているとふくらはぎなどが締め付けられるように痛くなり、少し休むとまた歩けるようになる間欠性跛行(はこう)や、休んでいても足が痛くなる、足が冷たい、足先の色調が悪い、傷の治りが悪いなどの症状が見られます。これらの症状は徐々に進んでいきます。

 動脈硬化をもたらす喫煙や生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症)、慢性腎臓病、肥満などがリスクとなりますので、これらの予防や治療が重要です。

 診断は上下肢血圧測定や超音波検査、造影CT検査、カテーテル造影検査を用いて行います。

 治療法は運動療法や薬物療法をはじめ、血管内治療(カテーテル治療)、外科的手術(バイパス術など)があります=図。重症になると下肢切断が必要になる場合もあり、注意が必要です。当院では内科医と外科医が協議することで、その方にとって最適な治療を提供できるよう心がけています。また治療後のリハビリ療法も積極的に行っております。

 さらに、閉塞性動脈硬化症による動脈の狭窄部位が比較的急速に閉塞した場合を急性動脈閉塞症と言います。この疾患は心臓や大動脈からの血栓や動脈硬化プラークが血流により下肢動脈に飛来して閉塞することも多いです。こちらは急速に血流障害が進行し、痛みやしびれ、皮膚が青白く色調不良になる、足が動かなくなるなどの症状が出現します。病変の程度によりますが、発症から6~8時間以内に適切な治療が実施されなければ神経や筋肉が障害を受けると言われています。そのため早急な診断と治療が必要になります。

 これらの下肢閉塞性動脈硬化症や下肢急性動脈閉塞症は放っておくと手遅れになります。治療による血流の改善が得られず、下肢切断が必要となるリスクがあります。症状が見られた場合はタイミングを逃すことなく早めに受診してください。治療はできるだけ早く行うのが望ましく、心臓病センター榊原病院では、24時間365日いつでもお困りの方を受け入れる体制を整えております。気になる症状があればいつでもご相談ください。

 ◇

 心臓病センター榊原病院(086―225―7111)

 よしおか・ゆうき 熊本県立熊本高校、久留米大学医学部卒業。熊本赤十字病院、国立循環器病研究センター病院を経て、2021年から心臓病センター榊原病院に勤務。22年から現職。

(2024年02月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP