花粉症対策 岡山大大学院 岡野光博准教授に聞く 目の症状にも効く点鼻薬 来季に備え舌下免疫療法

おかの・みつひろ 岡山一宮高、香川医科大(現香川大)医学部卒、岡山大大学院博士課程修了。鳥取市立病院、米ハーバード大客員研究員などを経て、2004年岡山大大学院助教授、07年4月から現職。日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会各代議員。

 スギ花粉が飛散する時季が近づいてきた。岡山県では2月中ごろから飛び始め、飛散量は昨年を下回ると予想される。しかし、花粉症は国民の約3割が罹患(りかん)しているといわれ、低年齢化も進んでいるだけに対策が欠かせない。岡山大大学院医歯薬学総合研究科(耳鼻咽喉・頭頸(とうけい)部外科学)の岡野光博准教授に、花粉症の最新治療法などを尋ねた。

 花粉症は、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称。原因花粉はスギ、ヒノキが代表的だが、どのようにして発症するのか―。

 花粉が体内に入ると、体が異物(抗原)と認識し「特異的IgE抗体」をつくる。この抗体が、粘膜の中にあり体を外敵から守っている肥満細胞に結合。花粉が再び入ると、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエンといった化学伝達物質が出て、鼻粘膜の神経や目の結膜を刺激し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどを引き起こす。

 治療は、対症療法と根治療法がある。対症療法は薬物療法が中心で別表の通り、軽症なら第2世代抗ヒスタミン薬を内服する。以前の第1世代より、眠気などの副作用が少ない。症状が重くなれば、鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬)を併用する。鼻づまりがひどい場合は、抗ロイコトリエン薬などを服用する。

 花粉の飛散前から、予防的に薬を飲む初期療法も勧められる。薬は5種類の中から、症状に応じて一つ選ぶ。服用は従来、飛散の1〜2週間前からといわれていたが「第2世代抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬は花粉が飛び始め、症状が出始めてからでも効果があると分かってきた」と岡野准教授は話す。

 さらに「眠気や胃腸障害といった副作用がまずない」と推奨するのが鼻噴霧用ステロイド薬。岡山大がスギ花粉症を対象に2010〜11年に行った臨床試験で、鼻と目の症状を軽減することを証明した。

 以前は日に2〜4回噴霧する必要があったが、毎日1回で済む薬が開発されている。「局所的には使い方で鼻血が出やすくなる方もいるが、花粉症シーズンの数カ月であれば全身的にはまず問題ない」と付言する。

 一方、スギ花粉症の根治が期待できる唯一の方法が「アレルゲン免疫療法(減感作療法)」。花粉抗原を少しずつ体に投与し、アレルギー反応を起こさない体質に改善する。

 このうち「皮下免疫療法」は、週1回通院で花粉の抽出液を皮下注射し、3カ月ほどかけて徐々に濃度を高める。その後は許容できる最高濃度に固定し、1カ月おきに注射。治療は3〜5年続けるのが望ましいという。

 ところが、長期の通院を要し、注射の痛みに加え、ぜんそくの悪化やアナフィラキシーショック(重度のアレルギー反応)を招く可能性もある。そこで注目されているのが「舌下免疫療法」だ。

 毎日1回、花粉エキスを舌の下に2分間含み、飲み込むだけ。開始から2週間内で投与量を増やしていき、その後は一定量にして2年間継続する。「注射と違って自宅で投与でき、副作用も少ない。ただし、効果は注射の方が勝る」と言う。

 舌下免疫療法は4月にも公的医療保険の対象になる見通しだが「副作用を防ぐため、花粉飛散期の4カ月以上前に開始する必要がある。今年始めたい人は飛散終了後の夏ごろからにし、来シーズンに備えてほしい」と岡野准教授は語る。

 このほか日常の対策として、外出時はマスク、眼鏡、帽子を着用▽帰宅時は玄関外で衣服をよく払い、手洗い、洗顔、うがいをする▽花粉飛散が多い日は窓や戸をできるだけ閉める▽洗濯物は屋内に干す▽粘膜を刺激するたばこ、アルコールは避ける―などが大切という。

(2014年01月21日 更新)

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