(4)新しい点眼薬と上手な使い方 川崎医科大学川崎病院薬剤師 大橋智子

おおはし・ともこ 岡山朝日高、武庫川女子大薬学部卒。日本糖尿病療養指導士、おかやま糖尿病サポーター、日本病態栄養学会認定NST研修修了。日本病院薬剤師会認定指導薬剤師。

 みなさんは点眼薬の正しい使い方はご存知ですか?

 知っているようで知らない点眼薬の使い方と、新しい点眼薬についてのお話です。

 まずは、基本的な注意から。点眼する前には手をよく洗って清潔にし、キャップも不潔なところに置かないようにしましょう。

 さし方は、下まぶたを軽く引いて目の中に確実に入れる方法と、これでは難しい時は、げんこつで下まぶたを引きながら、げんこつを台にしてさす方法もあります。それでもうまくできない人には補助器具も販売されています。また、目薬の先がまつ毛やまぶたに触れないようにしましょう。

 点眼したあとは目頭から出ていかないように1、2分まぶたを閉じるか、目頭を軽く押さえます。この時、眼をパチパチさせると、涙と一緒に目頭のほうに集まって、のどのほうへ流れ出てしまうので注意しましょう。

 1回の点眼量は1滴で十分です。あふれた点眼薬は皮膚炎の原因や、薬によっては目の周りが黒くなることなどがあるので、清潔なティッシュやガーゼでふき取りましょう。複数の点眼薬を使用する場合は、点眼の間隔を5分以上空けることが大切です。点眼間隔が短いと、先に点眼した薬が後に点眼した薬で洗い流されてしまい、十分な効果が得られないことがあります。また結膜嚢(のう)(点眼液や涙がたまる結膜のところの袋)の涙が完全に置き換わるのに約5分強かかるので、間隔を空けることが必要です。

 最近では、何種類も点眼することの多い緑内障の点眼薬に、2剤を配合した点眼薬もできました。眼圧を下げる薬剤である、「β―遮断薬+プロスタグランディン製剤」、「β―遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬」の組み合わせで配合され、単剤の時より少ない点眼回数でよくなりました。

 これは併用薬が減ることで正しく点眼でき、点眼回数を減らしても十分な効果が得られるためと言われています。

 次に点眼の順番ですが、医師から特別な指示のない場合は、水性点眼薬→懸濁性点眼薬→油性点眼薬→眼軟膏(なんこう)の順が効果的です。懸濁性の点眼薬は水に溶けにくく吸収されにくいため、また眼軟膏や油性点眼薬は効果発現が穏やかで長く効き、水をはじきやすいので、あとから点眼するほうがよいとされています。

 開封後の点眼薬は医療用で1カ月以内、一般用で3カ月以内に使用してください。使用開始日を保管する袋に書いておきましょう。また保存剤の入っていない1回使い切りの点眼薬も販売されています。この場合は使用後、薬が残っていても必ず破棄してください。

 小さい子どもへの点眼の際は、泣かせないように膝の上などで安心させてあげて、涙で薬が流されないようにしましょう。

 最後にテレビなどにも取り上げられた新しいドライアイ治療薬についてです。

 ドライアイは生活習慣や他の病気によって、涙の量や質が変わってしまうことでおこる目の不快感や視機能異常を伴う慢性の病気です。そのため水分を補うだけの点眼薬では十分でない場合もあります。涙に含まれるムチンというヌルヌルした粘液成分が減少した場合、涙の質が悪くなり、目の表面が乾いたり、ごろごろしたり、見えにくくなったりします。そこでムチンの分泌を増やす薬や、ムチンの産生を促す薬が発売されました。これらによって涙の質の改善ができるようになりました。

 点眼薬を使う方は多いと思います。正しく点眼することで効果も高まりますので参考にしていただけたら幸いです。



 川崎医科大学川崎病院((電)086―225―2111)

(2015年03月02日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP