(3)食事療法が最優先 倉敷スイートホスピタル栄養管理科主任 小見山百絵

小見山百絵栄養管理科主任

図1

図2

 糖尿病では血糖値の高い状態が続きます。治療の三本柱「食事療法・運動療法・薬物療法」のうち、食事療法はすべての人が対象となる大切なものです。それは血糖値が食事の量や種類、食べ方に左右されるからです。血糖値をよい状態に保ち、合併症を予防するための食事について考えてみましょう。

(1)適切な食事量を守る

 1日の必要エネルギーは標準体重と身体活動量から求めることができます(図1)。

(2)いろいろな食品をバランスよくとる

 “バランスのよい食事”を簡単に調えるには、1食の中に三つのものがそろうように考えてみるとよいでしょう(図2)。食品の目安量は、標準体重60キロ・必要エネルギー1600キロカロリーの方の場合、「ご飯200グラム、肉80グラム・魚80グラム・卵1個・豆腐100グラムからひとつ、野菜・海草・キノコを100グラム以上」です。

(3)規則正しく食事をする

 食事は1日3回、適当な間隔をあけて毎食同じくらいの量をとります。当院で糖尿病患者さんの食事の時間を調査したところ、「欠食がある・食事の間隔のバラツキがある・遅い時間に食べる」といった方に、血糖コントロールが思わしくない傾向がみられました。

(4)血糖値を上げにくい食事を心がける

 血糖値を速やかに上げるのは糖質(食物繊維以外の炭水化物)です。糖質の摂取量を抑えて血糖値や体重を管理しようとする考え方がありますが、極端に糖質を制限すると栄養素のバランスが崩れ、血糖値が乱れやすくなり、長期的には腎症や動脈硬化の進行のリスクが高まると言われています。糖質(ご飯・麺・パン・イモ類など)も適度にとり、他の食品と組み合わせていくのがよいでしょう。

 積極的にとりたいのは食物繊維です。ほとんどエネルギーにならない、食後の急激な血糖上昇を抑える、コレステロールの排泄(せつ)を促す、便通によいなどメリットがたくさんあります。

 野菜、海草、キノコや豆に多く含まれており、食事の最初にとると食べ過ぎの防止になります。主食に麦や雑穀を混ぜると手軽にとることができます。

 菓子や果物は血糖値の上昇や肥満を招き、糖尿病には“要注意食品”です。習慣的にたくさんとらないことが大切です。特に菓子はできるだけ間食はせず、「まんじゅう半分・日に一回」など自分でルールをつくって上手につきあっていきたいものです。

(5)食塩や脂質に気をつけて合併症を予防する

 血圧が高い方の食塩の目安は1日6グラム未満です。調味料のほか漬物、汁物、麺類、加工品、また市販の総菜や外食の利用は過剰摂取のもととなります。これらを重ねてとらないようにし、香辛料や酸味を使って料理の味付けにメリハリをつけるとよいでしょう。

 また、動脈硬化の予防のために、質のよい油を上手にとりたいですね。卵黄や魚卵、内臓や脂の多い肉を控え、今話題のα―リノレン酸を含むエゴマ油などを使ってみるのも手です。熱に弱く酸化されやすいので、加熱しない料理に使います。また、フッ素樹脂加工のフライパンを使ったり、網焼き、ゆでる、蒸すといった調理方法に変えると油の量を減らすことができます。

 正しい食事は良好な血糖コントロールやしっかりとした体づくりに不可欠。毎日続けるためには、「おいしく楽しく食べること」、「簡単にできて無駄がないこと」が大切ですね。そのためのヒント、ぜひお近くの管理栄養士にお尋ねください。



 倉敷スイートホスピタル((電)086―463―7111)


こみやま・ももえ ノートルダム清心女子大卒。川崎医大付属病院、倉敷平成病院勤務を経て、2012年から現職。管理栄養士。日本糖尿病療養指導士、NST専門療法士。

(2015年07月06日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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