パラダイムシフト 岡山済生会総合病院院長 山本和秀

 現在の病院に勤務して1年近くなりますが、前任の岡山大学病院と市中病院における医療の違いに驚いています。私が医師になりたてのころの医療とこれからの医療との違いに似て、大きなパラダイムシフトが起こっていると感じています。

 パラダイムシフトとは、ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること、社会の規範や価値観が変わることです。この過程では、従来の価値観が通用しない、新しい価値観で判断しないと現実を見誤ることがあります。

 私が医師になった40年前、患者さんの生命を救うことが全てに優先され、病気を治すこと、患者さんを延命させることが大切なこととされていました。患者さんの年齢も若く、病気を治せば元に戻り、社会復帰が容易にできる時代でした。今でも大学病院の医療は病気を治すことが主体で、難病の治療、がんの治療を積極的に行っています。多くの患者さんは自立しており、病気が治れば社会復帰が可能です。

 一方、市中病院では高齢の患者さんが多く、多種類の病気を同時に患っておられ、必ずしも自立できていない患者さんを診療しています。病気が完治して社会復帰できる方もおられますが、病気と共存しながら社会生活を送る方も多い状況です。厚生労働省は超高齢化社会を迎えるわが国の医療は、治す医療から治し支える医療への転換、可能な限り自宅での生活ができるように支える医療を求めています。

 これからの病院には病気を治療するだけでなく、かかりつけ医、訪問看護師、介護職員などと連携し、患者さんが自宅で生活できるように支援することが求められています。

(2016年02月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP