リビングウイル 岡山済生会総合病院院長 山本和秀

 2014年の日本人の平均寿命は男性が80・50歳、女性が86・83歳で、世界有数の長寿国になっています。さらに2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、超高齢社会が間近に迫っています。

 高齢社会を迎え、最近、テレビや雑誌で「終活」という言葉をよく目にするようになっています。終活とは、人生の終わりをより良いものとするため事前に準備を行うことで、例えば、お葬式や相続についての計画を立て、身辺整理をしておくといった内容です。

 一方、医療現場でよく使われる言葉に、「リビングウイル」という言葉があります。これは、自分で意思を決定できない状態になったときに受ける医療について、あらかじめ要望を伝えておく、あるいは文書に残しておくことです。例えば、治る見込みのない病気や植物状態になった場合に、延命医療を希望しない、などの意思を伝えておくことです。

 救急医療の現場では、意識不明の重篤な患者さんに対して可能な限りの救命措置を行います。しかし、超高齢社会を迎え、高度の認知症や多くの合併症を患っておられる高齢の患者さんが増え、どこまで救命措置を行うか判断に困ることがあります。本当は延命措置を望まれていない場合もあります。このような場合、本人の意思が文書で残されているとか、家族が本人の意思を聞いておられると、医療者側の対応がとりやすい場合があります。

 私も団塊の世代の一員で、このような場合にどのような医療を受けたいか、あらかじめ伝えておく必要があると思っています。「リビングウイル」を考えることは、人生を悲観的にとらえるためではなく、逆に健康な1日1日を大切に生きていくことにつながるのではないでしょうか。

(2016年02月25日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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