卵子凍結保存に医療現場慎重姿勢 岡山大調査、肯定派2割に低下

 健康な未婚女性が将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存することについて、倫理的に問題がないと考える医療機関が全国で4年前より大幅に減っていることが、岡山大による意識調査で分かった。2012年の調査では約6割を占めた肯定派が約2割に低下。昨年、日本産科婦人科学会が「推奨しない」との見解を示した影響とみられ、慎重な姿勢が医療現場に広がっている実態が浮かんだ。

 調査は昨年10~12月、岡山大大学院保健学研究科の中塚幹也教授の研究室が、産科・婦人科がある全国の1136機関の代表者を対象に行った(有効回答356)。がん治療の副作用などによる不妊を避ける従来の目的ではなく、健康な未婚女性による卵子の凍結保存について意識を探る狙いで、女性の年代などで異なる条件を設定し、差が出るかも調べた。

 「倫理的・社会的に問題ない」と答えた割合は、「パートナーはいないが将来的に子どもがほしい未婚の20、30代」との条件で25・4%、「同40代」で17・2%、「仕事に打ち込みたい未婚者」で20・2%と、ほぼ同様の水準だった。初の調査で、条件を分けていなかった12年夏の前回(有効回答415)は61・9%が「倫理的に問題ない」としており、大幅に減少した。

 健康な男性の精子の凍結保存についても、「問題ない」としたのは29・7%と、前回(60・0%)から半減した。

 回答した医療機関のうち、健康な未婚者向けに凍結保存を実施している施設は卵子18カ所、精子12カ所。一方、凍結を希望して20~30代女性が来院した施設が57カ所、40代女性が訪れたのが48カ所、男性の来院が19カ所あり、ニーズを必ずしも満たしていない現状をうかがわせた。

 健康な女性の卵子の凍結保存について、日本産科婦人科学会は、採卵で使用する排卵誘発剤が体に負担をかけることなどを指摘し、推奨しないスタンス。一方、日本生殖医学会は容認する見解を示し、千葉県浦安市では研究や実施に公費助成している。

 今回の調査結果について中塚教授は「日本産科婦人科学会の見解に加え、妊娠・出産でのさまざまなリスクが大きくなる晩産化を避けるべきとの意識の高まりを反映している可能性がある」と分析。「妊娠・出産によってキャリアが途絶える心配がなく、健康な女性が卵子の凍結保存を必要としない社会づくりが本来は求められる」と指摘している。

(2016年09月05日 更新)

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