アトピー性皮膚炎の治療法は 岡山赤十字病院 大野皮膚科部長に聞く

岡山赤十字病院の大野貴司皮膚科部長

症状に応じ最適な薬選択 保湿で皮膚バリアー維持

 「皮膚の日」(11月12日)にちなみ、日本臨床皮膚科医会岡山県支部は23日、岡山市で「いい皮膚の日の集い市民公開講座」を開く。今年のメインテーマである「アトピー性皮膚炎」の病態や治療法について、講座の座長を務める岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の大野貴司・皮膚科部長に聞いた。

 ―アトピー性皮膚炎はどのような疾患か。

 ひじやひざなど手足の関節部分、目の周囲、耳の付け根などの特徴的な部位に、かゆみ、皮膚の赤みやぶつぶつ、皮がむけてかさぶたになるなどの症状が出る。症状は治りにくく、一度治ったように見えても何度もぶり返す。薬などで治療しても症状が6カ月以上(乳児は2カ月以上)続く場合、慢性と判断する。これらの症状に加え、家族や本人にアトピー素因が認められるなどの条件がそろうと、アトピー性皮膚炎と診断する。

 乳幼児期に発症するのがほとんどだが、小学生になるころには症状が寛解する人が多い。ただ症状が長引く人もいるほか、思春期以降に再発する人、また大人になって発症するケースもあり、症状は個人差が大きい。

 ―発症する要因は。

 ダニやハウスダスト、幼児期は食物(牛乳や卵など)など、アレルギー反応を引き起こす原因物質(アレルゲン)が体内に入るのが一因。さらに近年注目されている要因が、皮膚機能の異常だ。皮膚のバリアー機能が低下することで、アレルゲンが体内に入り込みやすく、皮膚感染を起こしやすくなる。水分保持量が低下して乾燥肌になり、かゆみも起きやすい。

 家族にアトピーや他のアレルギー疾患がある遺伝的な要素に加え、アレルギーを起こすIgE抗体を産生しやすい体質、周囲にアレルゲンが多い環境、ストレスなどが複雑にからみ、症状を引き起こす。皮膚の天然保湿因子であるフィラグリン遺伝子に異常があれば、皮膚のバリアー機能が低下しやすい。

 ―治療方法は。

 日本皮膚科学会によって、治療のガイドラインが定められている。まずはステロイドなどの外用薬で炎症を抑えるのが基本。かつては「ステロイドは副作用が怖い」などの印象が広がったことで、使用を拒否する人もいた。今は薬の種類が増え、症状や度合いや部位によって最適な強さの薬を選択する手法が確立している。一度よく効いたからといって、同じ薬を使い続けることはなく、症状の変化に応じてその都度、外用薬の強さ、外用回数などを変更するのが正しい治療法だ。さらに1日の使用量や小児・妊婦への使用制限など決まりがあるものの、免疫調整外用薬(タクロリムス)なども使用されている。

 皮膚をかいて傷ができるとバリアーが壊れるので、かゆみを抑える抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を内服する。皮膚のバリアー機能の回復・維持を図るには保湿剤を塗るなどスキンケアが欠かせない。刺激の少ない普通のせっけんで洗い、成分が残らないようによく洗い流し、保湿剤を適切に使う。症状を悪化させる要因となるアレルゲンを極力取り除き、環境を整備することが大切だ。

 ―アトピー治療中に気を付けることは。

 ステロイド剤に拒否反応を示す人はいまだゼロではなく、処方されても塗らなかったり、治ったと自己判断して薬を途中でやめてしまうケースがある。こうなると症状を悪化させてしまう。適切な使い方をすれば、ステロイドは怖くない。状態が改善すれば、医師の指示に従ってステロイド使用をやめるのが一般的だが、最近の研究で、再発を繰り返すような場合、決められた容量・回数でステロイドなどの使用を続け、炎症を防ぐ「プロアクティブ療法」という治療法もある。アトピー治療の研究は年々進んでおり、不安があれば医師と相談しながら、アトピーと付き合ってほしい。

 ◇

いい皮膚の日の集い市民公開講座 11月23日、岡山

 いい皮膚の日の集い市民公開講座「知ってほしい皮膚の病気」は23日午前10時半~11時半、岡山市北区駅元町の岡山コンベンションセンターで開かれる。

 「アトピー性皮膚炎とは?」をテーマに、最新のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成に関わった佐伯秀久・日本医科大大学院医学研究科皮膚科学教授が講演する。講演終了後、皮膚科医による無料相談もある(受け付けは午前11時半まで)。

 入場無料。定員200人。問い合わせは日本臨床皮膚科医会岡山県支部(090―5707―3271、平日午前9時~午後5時)。

(2016年11月07日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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