子宮頸がんについてのお話 倉敷成人病センター院長 安藤正明

安藤正明院長

 複数ある婦人科系のがんのなかで若い女性には最も多い子宮頸(けい)がん。乳がんに次いでかかりやすいと言われる病気です。

 子宮の入り口の頸部にできる子宮頸がん==は、20~30代という若い人の発症の増加が深刻で、30~40代の女性に最も発症しやすくなります。定期検査を行う必要性と有効性が強く認識されており、30歳以上の女性を対象にした集団検診は全国各地で行われています。

 発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が深く関係しており、患者のほとんどが感染していることが分かっています。HPVは主に性行為によって感染し、それ以外での感染は極めてまれ。性交渉の経験がある方であれば誰でも感染するおそれがあるのです。

 通常は、感染しても90%以上の人は免疫力で体内から自然に排除されます。しかし、子宮の頸部の上皮という粘膜の部分に、HPVに感染して変化を起こした細胞が出現し、持続感染した一部のケースで細胞ががん化し、進行すると子宮頸部の深いところまで達したり、周辺に広がる場合もあります。また、子宮頸がんには扁平(へんぺい)上皮がんと腺がんという2種類があります=

 注意すべき点は、初期は自覚症状がないケースがほとんどであるということです。進行すると不正出血、おりものの増加、性交後の出血といった自覚症状が現れてきます。さらに進むと、普段から不正出血をするようになります。

 HPVに感染してから実際に子宮頸がんができるまでは平均5~10年といわれています。その間に定期的ながん検診で早期に発見できれば、がんになる前の異形成の段階で発見できるので有効な治療が行えます。

 治療方法は進行によって異なります。基本的には手術療法が中心で、早期の治療では「円錐(えんすい)切除術」が多く行われます。腹部は傷つけずに膣から切除し、短時間で終了するため、日帰りできることも多い手術です。子宮を温存できるため、手術後に妊娠・出産することも可能です。

 さらに進行したがんでは開腹手術や膣式手術、腹腔(ふくくう)鏡下手術を検討します。

 がんの広がり方によって、摘出する範囲が異なる術式が選択されます。術式は、子宮を切除する単純子宮全摘出術、子宮とともに腟の一部子宮周囲組織を少し切除する準広汎子宮全摘出術、さらにリンパ節を取り除く広汎子宮全摘出術があります。一般的に手術は開腹して行われますが、体の負担が少なく、痛みの大幅な軽減、歩行・食事開始までの期間の短縮、出血量の軽減が可能な腹腔鏡下手術も行われています。

 現在は保険適応外の手術である、子宮頸がんに対して行う「腹腔鏡下広汎子宮全摘術」は、岡山県では2015年8月より当院のみ先進医療の実施施設として登録されています。

 また、低侵襲手術として、今後はロボット支援下腹腔鏡手術も低侵襲と根治性を実現するために注目されています。当院は腹腔鏡下広汎子宮全摘術を1998年に開始しており、国内最多の経験があります。生存率は極めて良好です。また、年間のロボット手術件数は国内トップで西日本で唯一の指定研修施設となっております。

 子宮は妊娠・出産などの機能を果たす臓器であり、特に妊娠や出産を考える女性にとっては子宮頸がんの発症は深刻な問題です。将来妊娠したいという強い希望がある場合には、がんの病期にもよりますが(IA2~b1期で長径2・5センチ未満)、「腹腔鏡下広汎性子宮頸部切除術」を施行する場合もあります。子宮体部を残し頸部のみ切除する手術法であり、妊娠の可能性を残すことができます。

 2000年に当院で本邦初の手術に成功し、16年の経験があります。生存率は98%、出産率も極めて良好です。将来妊娠のご希望がある場合はその旨、ご相談ください。

 20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受け、いつもの月経とは違う出血を認めるときは婦人科を受診してください。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

(2016年11月21日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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