内視鏡センターの取り組み

川崎医科大学総合医療センターが開催した第4回開院記念市民公開講座。「内視鏡センターの取り組み」をテーマに3人の医師が講演。大勢の人々が熱心に聞いた=3月18日、川﨑祐宣記念ホール

河本博文内科部長

春間賢内科特任部長

末廣満彦内科医長

 川崎医科大学総合医療センター(岡山市北区中山下)の第4回開院記念市民公開講座が3月18日、センター内の川﨑祐宣記念ホールで開かれた。同病院の河本博文内科部長、春間賢内科特任部長、末廣満彦内科医長の3人が、「内視鏡センターの取り組み」をテーマに講演した。

内科部長 河本博文 内視鏡センターの取り組みと最近の胆膵内視鏡のトピックス

 消化器内視鏡治療は一般の人が受ける中で最も身近な低侵襲治療です。出血や急性胆管炎といった緊急疾患の治療や、ポリープやがんの切除といったものがすぐに思い浮かぶでしょう。
 当院の内視鏡センターは広さが650平方メートルで、内視鏡室は6室、緊急内視鏡治療室1室、透視室は2室備わっていて、フル稼働すれば年間1万件程度をこなせる能力があります。岡山市内ではトップクラスの規模になっています。

 所有している内視鏡の種類は豊富で、上下部内視鏡はもちろんのこと、小腸内視鏡を2本、超音波内視鏡を2本、ディスポーザブル胆道鏡1セット、カプセル内視鏡と、大学病院本院以上の種類を誇っています。したがって、保険診療上行える内視鏡検査治療でできないものはありません。

 今回は、私の得意な胆膵内視鏡治療についてお話しします。

 胆嚢(たんのう)や胆管は体の奥、膵(すい)臓と肝臓の間にあります。胆管は十二指腸につながっていて、肝臓で作られた胆汁や、膵液を送り込みます。胆汁は主に脂肪の消化を助ける働きがあり、膵液は食べ物を消化したり、胃酸を中和する役割があります。この胆汁の中に含まれているコレステロールやビリルビンが結晶となってできたものを結石といいます。胆石とは、文字通り胆嚢と胆管に存在する石で、8割ぐらいが胆嚢にあります。いろんな大きさ、形、色があります。

 胆石の病気には、胆道感染症、すなわち急性胆嚢炎と急性胆管炎があり、胆嚢や胆管の細くなっている所に石が引っ掛かって胆汁が停滞し、細菌感染を起こすと炎症が生じます。化膿(かのう)するので発熱があり、胆汁が出なくなるので黄疸(おうだん)が現れます。ただ、石があるからといって、痛みがなければ基本的に治療はしません。胆嚢結石を持つ人でも半分ほどは症状が出ません。

 検査法は、結石の有無を調べる画像検査です。超音波やCT、MRIが主体となっています。体に優しい非侵襲的検査です。それに対して内視鏡検査は逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡で、内視鏡が体内に入るので侵襲的な検査です。治療と並行して行うことが多いですね。

 結石による胆道感染症の治療は、胆嚢炎は手術となりますが、切除できない場合は内科で抗生剤を投与します。胆管炎の場合は内視鏡を使った胆管ドレナージで結石を除去します。

内科特任部長 春間 賢 胃の病気、腸の病気~体にも、心にもやさしい検査とは?

 長生きするにはがんと生活習慣病にならないこと、なっても早期発見・早期治療が大切です。なぜ、がんができるのでしょうか。もともとは遺伝子のちょっとした異常があり、そこにいろいろな要素が加わって最終的に遺伝子異常がどんどん起きてがんになります。影響するものは食習慣や喫煙、飲酒、肥満、ウイルスや細菌感染、腸内細菌などです。

 胃がんの95%はピロリ菌が原因です。しかし、ピロリ菌を持っているからといって必ずがんになるわけではなく、がんになるのは保菌者の約3%と言われています。ピロリ菌が無いのに胃がんになる確率は1万分の1とされます。

 消化器の臓器のうち、喉頭(こうとう)、咽頭(いんとう)、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門は一つのつながった臓器で、消化管と呼びます。消化管は10メートル近い長い臓器で、部位によって働きが違うので、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、便秘症、食道がん、胃がん、大腸がん、小腸がんなど実にたくさんの病気ができます。

 消化管の病気を診断するには、超音波検査、内視鏡検査、エックス線検査、CT検査など、いわゆる画像検査が必要です。特に胃や腸の病気については、直接、中をのぞくことのできる内視鏡検査は重要です。最近、胃カメラ検査については、太さが6ミリ以下の細い内視鏡が開発され、通常の内視鏡と遜色ない観察ができるようになりました。検査時間は5分前後です。大腸の検査については、まずは便の潜血検査ですが、超音波でも検査できます。一番確かなのは内視鏡ですが、CT検査を応用したCTコロノグラフィーでも検査ができるようになりました。また、ご高齢の方ですと、内視鏡検査よりおなかの超音波検査を勧めることもあります。

 参加されている方の中には、胃が痛かったり、ものがつかえて困ったのに、病院で検査を受けたら「異常ありません」「心配ありません」と言われ、なんとなく納得のいかない方もおられるのではないでしょうか。このような、病気がないのに消化器症状がある方を“機能性消化管障害”と呼び、診断には詳しい問診と、時には機能の検査が必要になります。内視鏡センターでは、機械的に内視鏡検査を行うのではなく、患者さんや、時にご家族の方とも一緒に病気を考え、どのように検査をするのがベストなのか相談しながら治療を進めています。

内科医長 末廣満彦 内視鏡による体にやさしい消化管のがん治療

 医療の進歩の一方で高齢社会となり、がんにかかる人が増えており、現在では2人に1人ががんを発症し、3人に1人が死亡すると言われています。また、その半数は胃がんや大腸がんなど消化器のがんですが、検診の普及や診断技術の向上により早期がんで発見される機会も増えています。

 早期消化器がんの治療はここ十数年で大きく変わりました。早期胃がんにおいては、2センチ以下で表層にとどまっていて、リンパ節に転移がないなど一部の症例に限定してスネアという金属の輪を用いた内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われていました。しかし、切除できるサイズや正確性に限界があり、治療後に再発する症例も見られることから、多くの場合に外科的切除が行われていました。

 その後、新たな治療法として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が登場しました。2006年に胃がんに対して保険診療の適応を受け、より高い根治性のある治療ができるようになりました。この治療では、内視鏡からさまざまな電気メスを出して病変を剥ぎ取ることができます。ESDは豊富な経験と技術が必要ですが、取り残しによる再発は極めて少なくなりました。また、大きな表在性の病変でも切除可能となり、従来では手術が不可欠であった場合でも胃を残して、以前と同様の食生活を維持することが可能となり、患者さんの負担も少なくなりました。

 その後、ESDは食道がん、大腸がんに対しても治療を行うことが認められ、日本で始まったこの治療は全世界に広がりつつあります。また、ESDを応用した新たな治療として腹腔(ふくくう)鏡と内視鏡を合わせた合同手術(LECS)も登場してきており、主に胃の粘膜下腫瘍に対する低侵襲治療として行われています。

 また、内視鏡治療は切除不能となった高度進行がんの緩和治療にも使われています。がんによる消化管の狭窄(きょうさく)・閉塞によっておこる食物、便の通過障害に対して狭窄を広げる消化管ステント術として応用されており、人工肛門を作る必要が無く苦痛の軽減を得ることができます。

 当院では、これらの治療を積極的に行っており、根治性の高い治療を目指すと同時に、患者さんにより負担の少ない治療についても提供させていただくようにしています。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

(2017年04月04日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

関連病院

PAGE TOP