特定タンパク質抑制で脳出血治療 岡山大大学院・西堀教授ら発表

西堀正洋教授

 特定のタンパク質の働きを抑えることで、脳卒中の一つ・脳出血を治療できる可能性があることを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)らのグループが明らかにした。脳梗塞やくも膜下出血の治療に有効なことを既に突き止めており、三つのタイプがある脳卒中全般の治療に役立つと期待される。成果は10日付の英電子科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。

 グループは体内の多様な炎症に関わるタンパク質「HMGB1」について長年研究。この働きを抑える抗体が、脳梗塞や、くも膜下出血後に生じる血管収縮の治療に効果的なことを確認している。今回は有効な治療薬がないとされる脳出血に着目し、発症させたラットでHMGB1の働きや開発した抗体の治療効果を調べた。

 その結果、HMGB1は脳出血が起きた部位周辺の神経細胞から放出され、脳の腫れや炎症を引き起こしていることが判明。働きを抑える抗体を注射すると、これらの症状は改善し、運動まひなど神経症状も回復した。神経細胞を観察すると、HMGB1は細胞内にとどまり、炎症に関与する9種類の遺伝子の発現量は7~4割ほど減っていたという。

 西堀教授は「今後は、HMGB1が放出される詳しい仕組みの解明や抗体の治療薬としての実用化へ向けた安全性の検証などを進めたい」としている。

 脳卒中 厚生労働省の統計では、国内の患者数は約118万人(2014年推計)。血管が詰まる脳梗塞(患者の約6割)、血管が破れる脳出血(3割)、こぶ状の動脈瘤(りゅう)が破裂するくも膜下出血(1割)に分類される。年間約11万人(15年)が死亡しており、後遺症によって寝たきりになるケースも多い。

(2017年04月10日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

カテゴリー

関連病院

PAGE TOP