(3)最新の小腸・大腸内視鏡検査および治療 津山中央病院消化器内視鏡センター長・主任部長 竹本浩二

【写真1】直腸Rbに局所遺残再発

【写真2】ESD後(左)と【写真3】切除標本

【写真4】小腸カプセル内視鏡検査(左)と【写真5】経口的ダブルバルーン内視鏡検査

【写真6】大腸カプセル内視鏡検査

竹本浩二消化器内視鏡センター長・主任部長 

 当院内視鏡センターは岡山県下有数の内視鏡診療実績を有し、県北の消化器疾患治療の中心的役割を担っています。2016年度の内視鏡総数は1万2675件で、その中で大腸内視鏡検査数は3846件であり、右肩上がりに増えています。最近の研究で検診目的にて大腸内視鏡検査を受けることにより大腸がんで亡くなるリスクの減少が証明され、今後さらに検査数の増加が予想されます。

 大腸内視鏡治療の最新の治療として大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という方法があります。大腸ESDは12年4月に保険適応となり、大腸腫瘍に対する内視鏡治療手技の選択肢が広がるとともに、大きさにかかわらず早期がんの完全一括摘除が可能となりました。当院でも12年4月以降16年度までの大腸ESDの件数は162件で16年度は47件行っています。大腸がんの治療は、今までは開腹手術が必要でしたが、早期がんであれば大腸ESDによって内視鏡切除ができる時代になってきました。写真1に示す症例のように肛門に接する早期直腸がんに対しても人工肛門をつくる必要はなく、大腸ESDによって切除ができます=写真2、3

 最近では大腸だけでなく、昔は暗黒の臓器と言われていた小腸も内視鏡での観察が可能となりました。小腸精査方法としては小腸カプセル内視鏡=写真4=およびダブルバルーン内視鏡検査=写真5=の二つの方法があります。当院ではカプセル内視鏡は09年度から導入しており16年度までの検査総数は304件で、16年度は59件でした。

 カプセル内視鏡検査は従来、原因不明の消化管出血が検査の適応でしたが、パテンシーカプセル(カプセル内視鏡検査前に実施するダミーのカプセル)を使用した開通性評価が保険適応となってから全小腸疾患に拡大しました。若年者に増えているクローン病や原因不明の腹痛にも適応であり、今後さらに検査数は増えると予想されます。

 また、当院では16年度から大腸カプセル内視鏡検査=写真6=も導入していますが、保険適応として、(1)以前、従来の大腸内視鏡で大腸全体の観察ができなかった方、(2)腹部の手術歴による癒着や器質的異常により従来の大腸内視鏡が困難と予想される方、以上を満たす方に限定されており、また前処置(下剤の大量服用)のこともあり、あまり件数が増えていないのが現状です。

 次にダブルバルーン内視鏡検査についてですが、当院では07年度に導入し、16年度までの検査総数は397件で、16年度は45件でした。ダブルバルーン内視鏡検査はカプセル内視鏡と違って病変部を生検することによって確定診断ができ、出血等があれば止血処置ができるなどの利点があります。また、ダブルバルーン内視鏡は挿入困難で深部観察ができない症例においても有用で、この内視鏡を使用することで深部観察ができる症例があります。

 以上当院で行っている最新の小腸・大腸内視鏡検査および治療について述べてまいりましたが、大腸がんは40歳代から増加し始めると言われており、40歳を過ぎたら一度は大腸内視鏡検査の受診をお勧めします。当院ではできるだけ無痛で大腸内視鏡検査を受けていただけるよう、われわれ医療スタッフも日々研鑽(けんさん)を積んでいます。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 たけもと・こうじ 愛媛県立今治西高校、島根医科大学医学部医学科卒。岡山大学病院、公立雲南総合病院、広島市民病院、国立岩国病院、亀田総合病院などを経て、2004年より津山中央病院勤務。医学博士。

(2017年09月18日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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