女性の「骨盤臓器脱」最先端治療 岡山中央病院、腹腔鏡手術で成果

手術支援ロボット「EMARO」を操作して骨盤臓器脱の腹腔鏡手術を手掛ける小林医師

 岡山中央病院(岡山市北区伊島北町)は、子宮やぼうこう、直腸が膣(ちつ)から出てしまう「骨盤臓器脱」の女性の治療で、岡山県内の医療機関に先駆け、腹腔鏡を使った最先端の手術に取り組み、成果を上げている。

 骨盤臓器脱は、出産や加齢によって子宮やぼうこうなどを支えている靱帯(じんたい)や骨盤底筋が緩み、膣内に違和感が生じるだけでなく、排尿や排便に支障を来す病気。閉経後の女性の半数は何らかの骨盤臓器脱が見受けられ、9人に1人は治療が必要になるといわれている。立ちっぱなしや重い物を持つ機会の多い仕事をする人、肥満の人がなりやすいとされる。

 同病院が手掛ける最先端治療は、腹腔鏡による仙骨膣固定術(LSC)と呼ばれ、泌尿器科の小林知子医師が担当している。

 おなかに直径0.5~1.5センチの穴を4カ所開け、ポリプロピレン製のメッシュを膣壁とぼうこうの間、膣壁と直腸の間に差し入れて固定する。メッシュは背骨の下の仙骨前面の靱帯に縫い止める。

 手術により、子宮頸部(けいぶ)が本来の位置に引き上げられるとともに、メッシュがハンモックの役割を果たし、臓器が下がるのを防ぐ。他の組織を傷付けず、メッシュにしわが寄らないよう適切な場所に固定するのに高度な技術が必要とされる。

 2015年3月から昨年末までに計70例を手掛けた。岡山県内はもちろん、広島県東部からの患者も多いという。

 従来のTVM手術と呼ばれるメッシュを用いた経膣的手術の場合、術後約3カ月間は腹圧がかかるような動作は控えなければならなかった。LSC手術は回復が早く、1週間入院するだけで、その後は日常生活の制限はない。

 昨年9月には、「EMARO(エマロ)」という手術支援ロボットを導入した。執刀医の頭に装着したセンサーが頭の動きを感知して、望む部位を素早く鮮明にモニターに映し出すことが可能となった。空気圧で内視鏡の動きを制御しているため動作が柔らかで、たとえ膣壁に触れたとしても傷付かず、手術の安全性も向上したという。

 小林医師は「骨盤臓器脱は手術をすれば必ず治り、仕事や家事を制限することもなくなる。悩みを抱え込まないで受診してほしい」と話している。

(2018年02月06日 更新)

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