(1)緊張型頭痛と片頭痛 岡山中央病院脳神経外科科長 平野一宏

平野一宏脳神経外科科長

 今回から、脳神経外科の外来診療について連載します。まず、最も患者さんの多い頭痛からご説明します。

 ■「締め付けられるように痛む」=緊張型頭痛

 私が外来で「力の抜き方を忘れちゃった病」と説明している緊張型頭痛の特徴は、「締め付けられる」や「頭が重い」という症状です。頭痛が始まった時期がはっきりせず、徐々に痛みが強くなり、受診されます。首筋から後ろ頭の痛みが多く、昼過ぎから夕方に強くなります。

 診察時、首筋や肩の筋肉の硬直程度を調べますが、筋肉を押すと、「痛い」とか「気持ちいい」と言われる方が多くおられます。

 この頭痛は真面目できちょうめんな性格の方に多いので、「頭の中に痛みの原因はない」ということを示すため、頭部CTやMRIの画像検査を行います。首肩腕の力を抜くことができるかどうか調べる「肘掛け椅子兆候」検査もよく行います。その目的は、患者さん自身が自分がリラックスできなくなっていることを自覚してもらうことです。自覚できれば治療はスムーズになります。

 治療は鎮痛薬と一緒に中枢性筋弛緩(しかん)剤を処方します。この頭痛には、本人の性格、日頃の姿勢、仕事内容やストレスなども関わっているので、生活面のアドバイスを行う場合があります。ストレッチや運動をお勧めすることもあります。

 ■「ズキンズキン痛む」=片頭痛

 急に片方の前頭部や側頭部がズキンズキン脈打つように痛みはじめ、半日から1日、長い方では3日間くらい寝込んでしまい、日常生活を送れなくなるのが片頭痛です。片頭痛という病名ですが、両側とも痛む方や頭全体が痛む方もおられます。頭痛とともに吐き気や嘔吐(おうと)が起こり、動くと頭痛が強くなるため、仕事も勉強もできなくなります。

 飲酒やストレス、逆にストレスからの解放がきっかけで起こることがあり、女性は月経と関連していることもあります。

 問診では前兆の有無を聞きます。典型的なのは閃輝(せんき)暗点(あんてん)という症状です。視野の中にピカピカ光る点やギザギザが見え、だんだん大きくなり、光の中や視野の一部が見えなくなる状態で頭痛の前に起こります。他にも、眠気、気分の落ち込み、音が響くように聞こえる―などいろいろな前兆があります。患者さんのうち、「あっ、頭痛が起こる」と感じる人が20~30%くらいおられます。

 また、自律神経症状を伴うことがあり、頭痛や嘔吐とともに下痢をする方もおられます。ズキンズキンという拍動性の頭痛は、次回ご紹介する脳動脈解離などの病気でも起こることがあるため、頭部CTやMRIなどの検査を行い、鑑別します。

 片頭痛の治療は、軽症の場合は通常の鎮痛薬を、中等症以上は痛みが起きた時や起きる前にトリプタン製剤を飲んでいただきます。現在処方できるのは、スマトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタンの5種類の製剤です。それぞれ即効性や作用時間、作用の強さが違い、使い分けます。

 吐き気で薬が飲めない方には、口の中で溶ける口腔(こうくう)内崩壊錠や点鼻薬、注射薬など、症状や状態に合わせて処方します。緊張型頭痛も併せ持つ混合型頭痛の方には、片頭痛の治療薬と一緒に緊張型頭痛の治療薬も処方する場合があります。

 片頭痛の発作が月に2回以上あったり、トリプタン製剤を使っても日常生活や仕事に支障が生じたりする方には、片頭痛予防薬をお勧めします。予防薬には、カルシウム拮抗(きっこう)薬、抗てんかん薬、抗うつ薬やβブロッカーなどがあり、毎日服用すると頭痛の頻度が減り、トリプタン製剤の効きがよくなります。

 片頭痛発作を誘発しやすい食品(チョコレート、チーズやアルコール飲料など)を避けることや、過労や睡眠不足にならないようにするなど、患者さんの生活指導も行います。

 次回は、気をつけないといけない危険な頭痛についてお話しします。

     ◇

 岡山中央病院(086―252―3221)

 ひらの・かずひろ 川崎医科大学付属高校、川崎医科大学卒。川崎医科大学付属病院勤務を経て、2014年に岡山中央病院脳神経外科へ赴任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。

(2018年04月03日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

タグ

関連病院

PAGE TOP