避難生活アドバイス(上) 口腔ケア 岡山大大学院・高柴正悟教授

高柴正悟教授

 西日本豪雨で県内各地に避難所が設けられた。避難生活で高齢者らが口腔(こうくう)ケアを怠ると誤嚥(ごえん)性肺炎になるリスクが高まる。東日本大震災の際、岩手県の避難所で巡回診療に当たった岡山大大学院の高柴正悟教授(歯周病態学)に、口の中を清潔に保つ歯磨きや義歯管理のポイントを聞いた。

 誤嚥性肺炎は食べ物や唾液が口の中の細菌と一緒に肺に入ることで起きる。阪神大震災以降、避難所での震災関連死の原因をみると肺炎が多く、その大部分は誤嚥性肺炎だ。特に暑い今の時期は、口の中も乾いて細菌が繁殖し、食べ物がうまくのみ込めなかったり、口の中に残ったりして、誤嚥が起きやすくなるので注意が必要だ。

 ブラッシングは、起床時と寝る前の2回を勧めたい。就寝中に細菌が増えているため、朝は食事前が望ましい。舌の表面なども含め時間をかけて丁寧に磨くことが大切。貴重な飲み水を使うため、泡立ちが少なく1回のうがいで済むタイプの歯磨き剤がいい。

 入れ歯は食後のたびに洗ってほしい。ブラシで磨いた後、口腔用のウエットティッシュや、水で湿らせたティッシュペーパーを使い、ぬめりが取れるまで拭き取るのがポイント。入れ歯を破損、紛失した場合、かむことに加え、のみ込む機能も低下する。食事量が減るため、可能な限り早めに作り直すようにしてほしい。

 睡眠導入剤など唾液が出にくくなる薬を服用していると、口が乾燥して細菌が増える場合が多い。口腔用の保湿液を塗ったり、水を飲んだりすることも心掛けて。避難所では一人きりにならず、周りの人と話せば唾液も出て乾燥も防げる。こうした口腔ケアを徹底すれば誤嚥性肺炎予防につながるだろう。

(2018年07月16日 更新)

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