避難所でも認知症のケアを 片山禎夫医師が注意喚起

片山禎夫院長

 西日本豪雨の被災者が暮らす避難所では、病気や障害などで特別な配慮が欠かせない人たちがいる。中でも認知症の人は環境の変化が強いストレスとなって症状が悪化する恐れがあり、注意が必要だ。認知症の人と家族の会岡山県支部顧問で日本認知症ケア学会理事の片山禎夫・片山内科クリニック院長(58)=倉敷市=に今求められる支援を聞いた。

 認知症は急激な変化を理解して対応するのが難しい病気。住み慣れた家を離れ、いつも一緒にいた家族や隣人が見当たらなければ不安が募り、大声を出したり、道に迷って帰れなくなったりする、いわゆる行動障害が出てくる。

 大勢の人がいる避難所だと、家族が迷惑を掛けまいと怒るなどして行動を抑えようとするが、本人は余計に混乱して悪循環に陥りかねない。そうなれば家族が居づらくなって避難所を転々とするようになる。まずは周りが受け入れて優しく接することが大切だ。

 避難所では、できれば認知症の人が落ち着けるよう専用スペースを設けてほしい。簡単な間仕切りでも構わない。毎日でなくてもデイサービスのようなことができれば理想的だ。

 認知症ケアの専門職が支援に入ることが望ましいが、難しければ、認知症サポーターなど専門の研修を受けた人をボランティアで募る方法もある。話し相手になるだけでもいいが、認知症の人は相手に暴言を吐くこともあるので、病気の特徴を理解した人でなければ対応が難しいと思う。

 介護サービスにきちんとつなげることも重要。被災前にサービスを受けていた人でも、担当のケアマネジャーが被災して頼れないことも予想される。避難所できめ細かな情報提供や相談を受ける体制が必要だろう。

 環境の変化に伴う症状の悪化は多くの場合、一時的だが、放置すれば、そのまま進行してしまう恐れがある。家族は今、心に余裕がないだろうが、本人も困って傷ついていることを忘れてはならない。誰かに助けを求めてもらいたい。

 支援する側には、ニーズを早くキャッチすることが求められる。私のクリニックでもスタッフが避難所を回っているが、医療や介護で広く連携して体制を組んでいかないといけない。

(2018年07月25日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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