(2)血圧・脂質・血糖のコントロール 倉敷スイートホスピタル院長 松木道裕

 メタボリックシンドロームを基盤とした肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)は、心筋梗塞、脳梗塞、腎不全などへ重症化し、健康寿命に影響を与える可能性があります。よりよい生活習慣を実践し、体重、血圧、血糖などをコントロールすることによって、これらの生活習慣病を防ぐことができます。

 今回は健康長命の達成を見据えた血圧、脂質、血糖のコントロールの実際についてご説明します。

 ■血圧のコントロール

 血圧には、心臓が収縮した時の収縮期血圧(上の血圧)と、拡張した時の拡張期血圧(下の血圧)があります。健常者の正常血圧は130/85mmHg未満です。140/90mmHg以上に上昇した場合に高血圧と診断されます。

 高血圧症の患者さんの9割以上は原因がはっきりしない本態性高血圧症です。食塩の多い食生活や肥満、遺伝的な素因(体質)、加齢、喫煙などが要因となります。血圧が上昇することで動脈硬化が進み、さらに高血圧状態が続くと、脳、心臓、腎臓などに臓器障害が起こってきます。

 血圧のコントロールの基本は減塩、体重の減量、適度の運動です。ライフスタイルを是正しても十分に血圧が下がらない場合、降圧薬による治療を行います。

 食塩の摂取量を1日3グラム減らせば、血圧を平均1~4mmHg下げる効果が期待できます。また、減量の降圧効果は明らかで、体重1キログラム当たり1~2mmHgの血圧低下が期待できます。

 血圧を2mmHg下げることができれば、脳血管障害や虚血性心疾患によって亡くなる人を1割減らすことができると考えられています。「血圧コントロール目標値」の表をご覧ください。

 ■脂質コントロール

 血中の脂質には、コレステロールや中性脂肪があります。脂質異常症では悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多くなる場合と、善玉(HDL)コレステロールが少なくなる場合があり、動脈硬化と強い関連があります。

 コレステロールの約30%は食事として摂取され、残りの70%は肝臓で作られます。高LDLコレステロール血症の原因は遺伝的な素因(体質)に負うところが大きいと考えられています。一方、高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症は肥満(特に内臓肥満)や糖尿病と関係しています。

 「脂質コントロールの目標値」の表を見てください。糖尿病や冠動脈疾患(心筋梗塞など)を持つ方は、既往のない方より厳しい管理目標が定められています。

 目標を達成するには、食事、運動療法が必要です。高LDLコレステロール血症がある場合はコレステロールを多く含む食品を控える必要があります。一方、HDLコレステロールを増やすには、積極的に運動し、喫煙者の方は禁煙に取り組むことです。中性脂肪が高い場合は糖質や油を多く含む食品やアルコール類を控えるようにしましょう。

 ■血糖コントロール

 空腹時血糖値が110~126mg/dlに上昇している場合、また食後血糖値が140~200mg/dlを示した場合、糖尿病の前段階(境界型)の可能性を考えます。この段階で、既に動脈硬化が進んでいると思われます。特に空腹時血糖値と食後血糖値の変動幅が大きくなるほど、その傾向は強くなります。

 血糖をコントロールするにも、食事・運動療法は重要です。食事では、標準体重に見合った1日の必要エネルギー量を、三大栄養素のバランスが取れるように配分してください。エネルギー比で炭水化物50~60%、たんぱく質15~20%、脂質20~25%が目安です。1日3食を規則正しくとる習慣が大切です。

 最近、肥満予防のための糖質制限食の効果が注目されています。極端な量の糖質摂取は避けるべきでしょう。生活習慣病の予防に最適な血糖コントロール目標値は、空腹時血糖値100mg/dl未満、食後血糖値140mg/dl未満と考えます。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 まつき・みちひろ 大分県立大分上野丘高校、川崎医科大学卒、川崎医科大学大学院修了、同大学講師、准教授、川崎医療福祉大学教授を経て2012年から現職。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。

(2018年11月19日 更新)

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

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