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(1)ボーダレス医療チームとは 倉敷中央病院HQM推進センター長 臨床検査・感染症科主任部長 橋本徹

橋本徹氏

 社会の高齢化に伴い当院に入院される患者さんも高齢者が増加しています。高齢者では普段から複数の疾患に対して治療を受けられている方が多く、入院の主たる理由となった疾患以外にもさまざまな病気を抱えて入院される方が増えてきました。普段はそれぞれの病気が安定した状態にあっても、当院に入院し、主たる病気自体や手術、点滴などの治療の影響により、さまざまな病気の状態が不安定になることはよくあります。

 入院すると患者さんは主たる疾患の治療を担当する診療科に入院して治療を受けることになりますが、患者さんがさまざまな疾患や問題を抱えているのに対し、一つの診療科だけで対応するのは十分といえないことも多く、主治医以外にいろいろな専門性を有する医療職のサポートが必要となります。また、高度急性期医療では、各種のケアを同時に提供する必要がありますが、少人数のスタッフですべてをまかなうには限界があり、それぞれのケアの専門性を有する医療職のサポートが求められていました。

 このような事態に対し、当院では病院全体で横断的に活動できる医療チームを編成しました=。それぞれの医療チームは医師、看護師を含め必要に応じて薬剤師、技師など多職種が一つのチームを組んで活動しています。さまざまな診療科で横断的に活動することによって診療科の壁をなくし、診療科にとらわれず院内のどの診療科であっても、患者さんにとって最適な診療が行えるよう重層的で複雑なケアを提供できるようサポートしています。

 横断的な医療チームが主治医や病棟のスタッフとともに活動することによって診療やケアの層を厚くし、院内のどの部署やどの診療科であっても診療やケアの質を保ち、当院として必要な診療やケアを提供できるようになります。

 横断的な診療を行う医療チームは病院によってさまざまな名称がありますが、当院のボーダレス医療チームという名称はやや聞き慣れないかもしれません。病院全体にわたる課題について話し合うなかで、このような横断的な診療を行う医療チームの活動をより一層推進することとし、新たな名称を考案しました。

 2016年、当院は、国際的な医療機能評価機関であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得しました。JCIの認証のためには、病院全体で統一したルールを定めて運用する必要があります。いわゆるローカルルールを認めず、病院全体でルールを標準化することが求められています。

 当院のような大規模病院には、多数の診療科があり、それぞれの診療科に多数の医師が所属しています。各診療科には診療科特有の事情があるため、診療科内でのみ通用する特別ルールができがちになり、放っておくと、病院の中にいくつものローカルルールが存在することになります。これは効率性や安全性の障害となりえるため、できるだけなくしていく必要があります。診療科の縦割りによる弊害をなくすためにも横断的な医療チームは活躍しています。

 本シリーズでは緩和ケアや感染制御など、さまざまな医療現場で医師や看護師、薬剤師、技師など多職種で構成する医療チームの役割や活動内容を紹介します。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 はしもと・とおる 金沢大学教育学部附属高等学校、京都大学医学部卒。同大大学院医学研究科修了。1995年より倉敷中央病院勤務。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医、日本臨床検査医学会管理医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年11月04日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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