文字 

22 包皮炎 刺激与えないこと重要

 四歳の男の子です。一昨日からおチンチンの先が少し赤く腫れてきました。かゆいらしく、服の上からしきりに触っていましたが、今朝からおしっこをする時に痛がるそぶりを見せ始めました。心配になり、おチンチンを見てみると、おチンチンの先の赤みや腫れがひどくなったように思います。今朝のパンツには 膿 ( うみ ) のようなものも付いていました。前にもこういったことがあり病院に連れて行きました。こういうときは、どうすればよいのでしょうか。

   ◇   ◇

 この時期(およそ三歳から六歳ごろまで)の男の子は、陰茎を無意識のうちに触りがちです。包皮は大変デリケートな皮膚であり、物理的な刺激(=触る)により容易に炎症を起こします。

 炎症が起きるとかゆみが生じます。かゆいと引っかく(触る)→それにより炎症が悪化→さらにかゆくなり引っかく(触る)→引っかいてさらに炎症が悪化……といった悪循環に陥ります。

 こうして、包皮自体の感染防御機構が破たんし、細菌による二次感染( 化膿 ( かのう ) )が生じます。痛み( 疼痛 ( とうつう ) )とは、かゆみが強くなった状態のことなので、炎症が悪化するとかゆみは疼痛に変化し、感染による発赤・ 腫脹 ( しゅちょう ) ・排膿といったことにつながります。

 包皮の生理学的な意義は不明であり、尿中アンモニアからの亀頭部の保護作用、乳幼児の外尿道口の保護作用がいわれていますが、根拠はありません。宗教的な目的から生まれてすぐに包皮を切除(割礼)する人たちがいます。割礼をした私の知人(米国人)も「割礼による不利益は全くない」といっていました。現代では、包皮は生理学的には無用のものなのかもしれません。

 さて、包茎と包皮炎の関係です。“包茎だと亀頭の清潔が保てないから包皮炎になる”と信じておられる方も(医療関係者も含め)まだまだ大勢いらっしゃり、「包茎があるので包皮炎になってしまって…」「包皮炎になったので、予防のため包茎を治したくて…」といって受診されます。しかし、包茎と包皮炎とは全く関係がないのです。

 包皮炎を主訴に受診する真性包茎―むこうと思っても亀頭が露出しない―と、仮性包茎―むこうと思うと亀頭が全部露出できる―の患児の間には包皮炎の発生頻度に有意差はないのです。包茎は、包皮炎の原因や誘因にならないし、包皮炎の治療の妨げにもならないのです。

 治療には抗生剤の内服治療と外用(塗布)治療の二通りがあります。炎症がひどいと内服も必要ですが、軽症であれば外用薬の塗布のみで十分です。物理的な刺激を与えないことが治療に重要ですから、痛かゆそうで患児が頻繁に触りそうなときには、積極的に糖質(ステロイド)ホルモン剤の塗布による 掻痒 ( そうよう ) 感や疼痛の軽減を図ります。

 糖質ホルモン含有の軟こうやクリームが自宅にあれば、これを患部に軽く塗るだけで赤みを帯びた程度の包皮炎は治療できます。しかし、この薬を乱用すると真菌(カビ)による皮膚炎を起こしてきますので、連続する二、三日以上の使用は控えてください。

 (後藤隆文・岡山医療センター小児外科医長)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年04月08日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ