文字 

第5回 国立病院機構岡山医療センター 小児医療 超低出生体重児 救命率ほぼ100%

保育器に入った赤ちゃんを診察する影山医師

 保育器の中には、大人の手のひらに収まるほどの小さな赤ちゃん。体重はわずか五〇〇グラム。妊娠後、四カ月足らずで生まれた。体には人工呼吸器や何本もの点滴が取り付けられている。

 「通常より早く生まれた赤ちゃんは発達の遅れや脳性まひなどが心配されます。私たちの使命は、この子が二十歳になったとき、同級生と同じ生活ができるよう全力を尽くすこと」

 赤ちゃんに聴診器を当てながら、新生児科の影山操医師が話す。

 岡山医療センターで「小児」にかかわる医師は十八人。研修医八人を含めると二十六人という岡山県内最大規模の陣容で新生児科、小児内科、小児外科を担当している。

 同センターは二〇〇五年四月、早産や重い病気のある新生児と妊婦に高度な医療を提供する総合周産期母子医療センターに指定された。母体・胎児集中治療室(MFICU)六床、新生児集中治療室(NICU)十五床を有し、年間約五百人のハイリスク新生児などを受け入れる。

 影山医師らは栄養補給や酸素供給量を微妙に調節しながら治療と療育を並行して行うことで、多くの命を救ってきた。特に一〇〇〇グラム未満の超低出生体重児の救命率(無事退院できる割合)はここ数年ほぼ100%で推移している。

 「超低出生体重児の出産は、産科医と連携を取りタイミングを図る」と、“チーム医療”の大切さを強調する。

 年間七百件以上の出産を扱う岡山医療センターでは、多くの母子が誕生直後の赤ちゃんを母親が素肌で約二時間抱くカンガルーケアを体験する。産後すぐの母乳は初乳といわれ、免疫物質が多く含まれている。通常は捨てられるものだが、カンガルーケアで飲ませることで、感染症予防効果が見込めるという。

 小児内科、小児外科も専門分野が多岐にわたっている。内分泌、神経、アレルギー・感染症、血液悪性 腫瘍 ( しゅよう ) 、代謝、救命救急、腎臓、循環器と「あらゆる分野に精通している」(久保俊英主任小児科医長)のが特徴で、高度な専門医療を行う体制を整えている。

 入院患者は内科、外科系合わせて年間約三千人。中四国一円から集まる。

 救急医療も充実。重症な患者を受け入れる三次施設になっており、常時小児科医一人を配置している。〇六年度は一万五千六百人もの小児が時間外診療を訪れた。

 こうした取り組みもあって、同センターは一九九一年、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(ユニセフ)から「赤ちゃんにやさしい病院」として先進国で初めて認定された。

 久保主任小児科医長は「限られたスタッフで二十四時間対応していくことは非常に大変だが、岡山市における小児の基幹病院として頑張っていきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年02月26日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ