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第9回 岡山赤十字病院 災害医療 実践通して機動力向上

西大寺会陽の会場で救護する岡山赤十字病院のスタッフら

石井史子救命救急センター長

 阪神大震災(一九九五年)、鳥取県西部地震(二〇〇〇年)、新潟県中越地震(〇四年)…。災害時の医療支援に積極的に参加するのも病院の特徴だ。

 一九九七年には都道府県ごとに一カ所設置される「基幹災害医療センター」の指定を病院として受け、拠点性が高まった。ヘリポートや食料・医療資器材の備蓄倉庫などを整備し、医師、看護師らの救護班(六人)を九チーム編成している。

 大規模災害時の活動が注目されがちだが、岡山県内で開かれるマラソンやトライアスロン大会、西大寺会陽などのイベントにも頻繁に出動、舞台裏から支えている。

 「救急と災害医療は近いようで内容が違う」。こう話すのは、院内で災害時医療などを担う石井史子救命救急センター長。救急は大勢で一人の患者を治療するが、災害医療は少ない人数で大勢の患者を診なければならないからだ。

 今年の西大寺会陽でのこと。昨年死者が出た反省から救護態勢を強化したが、大勢の裸群による 宝木 ( しんぎ ) 争奪戦が始まると会場に設けられた救護所に十人ほどの患者が次々と運び込まれ、ベッドは満床に。意識のない人もおり、一瞬で災害時のような状態になった。

 「皆無事だったが、いくら訓練していても『えっ』と思うようなことが現場ではある。『備えあっても憂いあり』です」と石井センター長。

 阪神大震災を教訓に国がより機動力の高い災害医療専門チームとして育成している「DMAT(ディーマット)」でも、院内から二チーム(各五人)が参加、専門トレーニングを受けている。個人で携帯電話のメールアドレスも登録し、緊急時に備えている。

 「日ごろの実践を通して、より機動力を高めていきたい」と石井センター長は話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月25日 更新)

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