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第13回 岡山旭東病院 脳疾患 各診療科集まり方針議論 機能回復へ全力サポート

脳疾患に関連する各診療科が集まり、治療法などを検討するモーニング・カンファレンス

エックス線を照射して腫瘍などを治療するサイバーナイフ

 午前八時、四階の脳神経外科病棟に医師たちが次々と集まった。

 「脳 腫瘍 ( しゅよう ) が進行しているな。慎重に手術を進めていこう」「くも膜下出血で昨日手術を行ったが、経過は順調だ」

 MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)を見ながら、医師らが議論を交わす。

 毎週火曜日、同棟で行われるモーニング・カンファレンス。脳神経外科や神経内科、放射線科など各診療科の医師、看護師らが、その週に行われる手術の確認や個々の症例を報告し合う。「脳疾患だけでも十人以上の医師が日々治療に当たる。県内の医療機関でもスタッフはかなり充実していると思う」と土井章弘院長。

 日本人の死因で三番目に多い脳卒中は、脳の血管が詰まる脳梗塞▽脳の表面を走る動脈にこぶができて破れるくも膜下出血▽深部で出血する脳出血―に大別される。

 同病院では二〇〇〇年七月に脳卒中センターを開設。患者を受け入れた後、脳梗塞だったら内科、出血だと外科―というように、症状に応じて各科が連携して治療に当たるシステムを整えている。

 「いずれも命にかかわったり、障害が残るケースも多く、迅速な処置が必要」と同センター長で神経内科の柏原健一主任医長。〇七年は脳梗塞四百八十人、脳内出血百四人、くも膜下出血三十五人を受け入れた。

 治療面でも症状に応じて最適な手法が取られている。

 例えば、脳卒中のうち約六割を占める脳梗塞では、発症から三時間以内に使用すれば効果が見込める新薬「tPA」を投与する治療を実施するほか、血管内治療にも取り組む。手術では、動脈瘤が年間約百件、腫瘍が同六十件と、いずれも岡山県内トップクラスの実績だ。

 脳腫瘍などを切らずに治療することができる高精度の定位放射線装置「サイバーナイフ」も成果を挙げる。米国で開発された医療機器で、約千二百の方向から、コンピューター制御でエックス線を百カ所程度照射する最先端の治療法として知られる。

 「身体的な負担が軽いのはもちろん、腫瘍が脳の深部にあったり、血管や視神経、脳幹部など重要な組織に接近して手術が困難な場合にも治療ができる」と吉岡純二診療部長。二〇〇〇年六月の導入以降、すでに約二千人(〇八年三月末)の治療を行った。

 脳梗塞などの手術を行った患者に対し、機能面の回復を担うのがリハビリテーションだ。同病院では理学療法士や作業療法士、言語聴覚士ら総勢三十五人のスタッフが連携し、早ければ手術の翌日からリハビリをスタート。早めに着手することで体力の衰えをできるだけ抑え、社会復帰を促すのが狙いだ。

 リハビリテーション課の野間博光課長は「退院後の生活を考えると、いかに早くベッドから離れられるかが重要。全力でサポートするとともに、突然の病気に対する不安も臨床心理士らが対応している」と言う。

 吉岡診療部長は「二十四時間態勢で各科が待機し万一の事態に備えている。今後も高度な医療を提供できるようベストを尽くしたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年05月06日 更新)

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