文字 

第14回 慈圭病院 変わる精神科医療 生活の障害取り除く 薬物療法単剤化へ 力入れる早期治療

診察する武田副院長

 患者の心の悩みを受容しながら行う薬物療法。幻聴や妄想などの症状が慢性化しやすい統合失調症などでは特に重要だが、副作用で生活に支障をきたすこともある。

 「症状があっても社会生活は可能。症状ではなく、『生活』の障害を取り除くことが大切」と武田俊彦副院長は強調する。

 脳の神経伝達物質をコントロールするのが薬の役割。近年、さまざまな症状に効く「第二世代抗精神病薬」の普及で「多剤大量」から「単剤低用量」へと変わりつつある。

 慈圭病院では一種類の抗精神病薬を使う単剤化率が43%、初回入院に限ると80%に達し、一般精神科が平均15―30%とされる中では高い。ただ第二世代前の薬が効く患者もおり、処方技術が重要だ。

 重い状態の人以外にも、新たに力を入れるのが「早期精神病性障害」。明確な診断はつかないが、ごく軽い幻覚体験や疑り深さなどがあって社会生活に支障をきたし始めたばかりの人たちだ。

 精神障害に進む人もいれば、一時的な症状で終わる人もいる。この“グレーゾーン”に早い段階でどう介入するかという研究を二〇〇六年度から国の補助を受けて続けている。

 日常生活能力を点数化したGAF(100点満点)でみると、「早期」の人は薬を飲み始めて四週間後に25から69に飛躍的に改善。統合失調症の患者に比べ反応性の良さが目立ち、適切な診断と薬の処方による効果の高さを示した。

 五月からは、神経症性障害やストレス関連障害など比較的軽症の人を対象とした「ストレスケア外来」を開設。水曜日を中心に週一回午後一時―三時に予約制で行う。

 武田副院長は「『精神科』の看板にまだ抵抗感を持つ人もいる。垣根を低くし、早めに来てもらえるようにしたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年05月13日 更新)

タグ: 精神疾患慈圭病院

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ