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第14回 慈圭病院 地域ケア 定期訪問で状況把握

訪問先で男性の話に耳を傾ける森口さん。衣服の修繕など、相談は暮らし全般に及んだ

羽原俊明医師

 「こんにちは、おじゃましますよ」。病院から車で約四十分離れた岡山県南部の田園地帯。五月上旬、森口妙子地域ケア室長の明るい声が訪問先の自宅玄関に響いた。

 相手は統合失調症の六十代男性。一人暮らしの男性にとって森口さんは、気兼ねなく話せる数少ない存在だ。

 「みんなと話をするんが難しい。はみ出されたような気持ちにもなる。自信がないのが病気なんじゃ」。男性の不安に耳を傾け、励ましの言葉を掛ける。生活上の困り事を聞くことも忘れない。

 地域ケア室は森口さんら三人で、岡山県南の患者約百十人の体調や生活、服薬などの状況把握を定期的に続ける。全員が保健師、看護師の両方の資格を持ち、訪問活動以外に医師の診察もサポートする。仕事はハードだが、「患者が私たちを信頼してくれる時が一番の喜び」と森口さん。

 精神科医療の治療体制は従来、入院がメーンとされた。「地域で生きることが本来の姿。患者はみな、それが目標」と羽原俊明医師。だが、患者が地域に戻った時に抱えるストレスから、実現が難しい場合もある。

 食事や入浴、掃除、薬の管理、人間関係…。いくらかでも支えることで患者のストレスは解消されるといい、病院は必要に応じて家族やヘルパー、民生委員らの協力を織り込んだ患者の退院後の生活計画を組み立てる。

 「誰かのサポートがあれば、一人で暮らすことはできる」。羽原医師はそう考える。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年05月13日 更新)

タグ: 精神疾患慈圭病院

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