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第15回 おおもと病院 乳がん 山本泰久名誉院長 県内トップを誇る手術数

乳がん治療に取り組む山本名誉院長

 岡山大医学部第一外科当時から、乳がんの治療、検診活動に先駆的に取り組んできた。乳がんの予防や自己検診普及のため、講演などの啓発も積極的に行ってきた。

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 開院したおおもと病院は、乳がんの手術症例が岡山県内トップ。これまでに四千四百四十三例を手掛け、十年生存率は80・6%。全国平均(74・9%)を大きく上回る。開院当初から毎月、近隣の医療機関から症例を持ち寄り検討する「おおもとカンファレンス」を開いている。

 「早期発見、治療」を訴える。効果があるとされる乳がん診断法の一つ「マンモグラフィー検査」だけでは見逃す部位があり、「視触診も合わせて定期的に行う必要がある」。検診の受診率が二割程度にとどまっているデータがあり、「50―60%に上げたい」という。

 女性で乳がんにかかりやすい条件として、四十歳以上であったり、未婚、初産年齢が三十歳以上、閉経年齢が五十五歳以上、肥満、近親者が乳がんにかかったことがある―などが挙げられている。

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乳がん治療は大きさや悪性度、リンパ節への転移状況によって、術前の化学療法、乳房の切除や温存、術後の治療などが異なってくる。それだけに「患者に合ったオーダーメード治療をしている」という。

 乳がんは三十代後半から増え始め、五十代が多い。乳頭や乳房の形を崩さない手術も求められる。乳房を残す温存術は、がんを切除し、安全性が確認できることがポイント。

 山本名誉院長の経験による温存手術の方法がある。一例として、乳頭の下面乳腺組織を切除したが、乳頭は温存されたケース。温存術後、切除部分に空気を注入し五日間冷やす。空気は吸収されてリンパ液がたまり、元の形が保たれた。最近の温存術は、年間二百症例以上の乳がん手術のうち二〇〇六年が71%、〇七年は64%。

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乳がん治療、検診への貢献で保健文化賞、山陽新聞賞(社会功労)、日本対がん協会賞、松岡良明賞など多くを受賞している。

 「患者との関係をマニュアル化してはいけない。人と人との付き合いを大切にし、互いに病を治す努力をする」ことがモットー。病院を運営する医療法人の理事長でもある。昨年、名誉院長に就いたが診察、手術のスケジュールが詰まっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年05月20日 更新)

タグ: がん女性おおもと病院

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