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第17回 万成病院 認知症治療 多職種連携しケア 残存機能生かし生活の質改善

認知症患者の口腔ケアを行う藤原さん

 ほおを軽くさすり、歯ブラシのような形のスポンジをポンポンと唇に当て湿らせる。

 「『ドライマウス』と言って、口を動かさないと、殺菌効果を持つ 唾 ( だ ) 液が分泌されず、肺炎などを起こしやすいんです」

 歯科衛生士の藤原ゆみさんが寝たきりの認知症の女性患者(76)の口をのぞき込みながら言う。吸引ブラシで口の中の粘膜に付いた細菌などを取り除き、別のブラシで歯の汚れや付着物を細かく取る。

 年々増える認知症患者。万成病院では入院患者が二百四十人と全体の約48%を占める。病気の進行に伴って認知機能だけでなく、さまざまな機能が落ちていくため、多職種でのケアが欠かせない。

 中でも万成病院の歯科は充実。食べ物をかんでのみ込むという摂食・ 嚥下 ( えんげ ) 機能を維持できるように歯科医師と言語聴覚士が早期からかかわり、歯科衛生士が口 腔 ( くう ) ケアで口の中をきれいに保つようにする。

 「自分の口で食べることは肺炎などの予防とともに栄養改善や意欲の向上など、あらゆる効果に結びつく」と小林直樹歯科医長。

 リハビリは作業療法士十九人のうち九人が認知症を担当する。「うちは認知症患者で、身体機能などの合併症を持つ人が半分。総合的な作業療法が求められる」と楢原伸二リハビリテーション部部長は言う。

 治療方針は十職種に及ぶスタッフのカンファレンスで決める。脳神経外科医で介護老人保健施設の施設長も務める藪野信美医師は「急性期は薬で症状を安定させることが必要だが、後はその人の残存・潜在機能を生かすことが重要。一人の患者に皆が同じ目的を持って臨むように連携している」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年06月03日 更新)

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