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第18回 旭川荘療育センター児童院 外来・入院 早期診断と療育に力 喜びある生活へ工夫

院内で開かれた人形劇。利用者が楽しめる行事が組まれている

浅野孝医務課長

堀雅彦小児歯科医長

 「重症心身障害の原因となる基礎疾患は脳性まひ、脳形成の異常、脳炎・脳症後遺症、遺伝子、染色体異常など。運動系の遅れを的確に診断し、対応する必要がある」。岡院長(小児神経科、岡山大大学院教授を経て就任)は早期の診断と療育を強調する。

 専門外来では運動障害、知的発達遅滞、言葉の遅れ、さらに自閉症、広汎性発達障害、注意欠陥・多動性障害などを診察、診断し、治療や療育を勧める。診療科目は小児科、小児神経科、精神科、歯科などがあり、年間延べ四万六千八百四十五人(二〇〇六年度)が受診。専門療育ができる理学、作業、言語聴覚、心理のスタッフがそろう。

 ◆超重症児

 症状の違いで六つに分かれた病棟は、改築され広々としている。定員は二百三十七人。このうち呼吸障害などがあり経管栄養や人工呼吸などが必要な超重症児は十五人(〇七年三月末)が暮らす。

 医療を提供するだけでなく、一人一人が喜びのある生活ができる工夫をしている。院内外でのさまざまな行事を楽しみ、県立岡山養護学校の教育を受けることも可能だ。

 浅野孝医務課長(小児神経科)は、レスピレーター(人工呼吸器)をつけた一人の超重症の幼児を紹介する。まばたきができず手足はまひ。体位を定期的に変える必要がある。

 しかし、スタッフは障害の重さにとらわれず「子どもである」という認識に立ち返り、まず「抱っこをする」ことを考えた。管でつながった小さな体を安定させる板で支え、そっと抱えてロッキングチェアに座る。すると、幼児の体の緊張がとれて体調が落ち着く。ビニールプールに湯を注いだ臨時の風呂にも入れると同じ様子になる。「このお子さんは多くの人がかかわることが、うれしいのだと思う」と浅野医務課長。

 ◆歯科

 〇七年に「口腔健康科学センター」を開設した。歯科治療は年間延べ約四千八百人で、旭川荘内と外来が半々。「歯のどこが、どのように痛いかコミュニケーションがとりにくい場合があり、レントゲンで診断し、痛みのサインを見逃さないようにしている」と堀雅彦小児歯科医長。「歯磨きができにくく歯周疾患が多い。適切なケアで 罹患 ( りかん ) 率が下がる」という。

 食事をスムーズにとり、飲み込むことを可能にする訓練や指導も行う。武田明美歯科衛生主幹は「飲み込みやすい姿勢、食べやすく栄養を考えた調理方法も話す」と説明する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年06月17日 更新)

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