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子供の病気対処法を解説 子育てキャラバン隊in真庭セミナー

子どもの病気への対処法などが紹介された「子育てキャラバン隊in真庭」

 社会全体で子どもを育てる環境づくりを考える「子育てキャラバン隊in真庭」(山陽新聞社会事業団主催、真庭市と山陽新聞社共催)が21日、真庭市鍋屋の久世エスパスで開かれ、保護者ら約150人が熱心に聴講した。国立病院機構岡山医療センターの青山興司院長が「私の考える子育て論」と題して特別講演。セミナー「子どもが病気になった時」では青山院長をコーディネーターに、小児科医5人が病気への対処法などを丁寧に解説した。(以下発言要旨)

インフルエンザ

人込み避け予防接種を

川崎医科大学小児科学講座准教授 川崎浩三

 インフルエンザには、季節型や新型などの分類があるが、現在岡山県で流行しているのは新型だ。飛沫(ひまつ)感染するので、手洗い・マスク、人込みを避けることと予防接種が最大の予防策となる。

 ワクチン接種については、今年5月以降に新型にかかった人は今季、新型のワクチンは必要ない。季節性のワクチンは13歳未満は2回、それ以上なら1回を接種するが、今年はワクチン供給が厳しい。新型にかかっていない人はワクチンをぜひ接種してほしい。

 抗ウイルス薬のタミフルは異常行動との関連が疑われ、10歳以上~20歳未満への使用を控えている。吸入薬のリレンザは気管を刺激し、ぜんそく発作を誘発する可能性があることを知っておきたい。


腹痛、下痢

便の色よく観察しよう

倉敷中央病院小児科部長 桑門克治

 子どもの腹痛で、最も多い原因は便秘。排便時に痛みを感じると我慢するようになり、ますます便秘になるという悪循環を繰り返す。また、菓子を食べると便秘になりやすいので注意が必要だ。便秘になった乳児の場合、思い切って綿棒を肛門に1~2センチ入れ刺激を与えてやるとよい。

 下痢の際、便の色をよく観察してもらいたい。便に血が混じっているようなら受診が必要。ウイルス性、細菌性の下痢があるが、強い吐き気▽尿の回数減▽ふらふらになる―などの場合は入院や点滴が必要になる。回復時には水分も少量ずつ与えてもらいたい。

 便秘の多くは繊維質やでんぷんの不足。規則正しい生活や食事を守るよう親が気を配ってほしい。


発達障害

「困り感」理解して対応

岡山大学病院小児神経科助教 岡牧郎

 発達障害とは、子どもの発達時期に生じるいろいろな問題を含む広い考え方だが、近年は主に、対人関係・集団生活でのかかわりが難しかったり、こだわりが強い「広汎性発達障害」▽不注意タイプと多動性・衝動性タイプ、そして混合タイプがある「注意欠陥多動性障害(ADHD)」▽知的障害がないにもかかわらず文字の読み書き計算が難しいなどが挙げられる「学習障害(LD)」―の三つについてをいう。

 対応には、本人の「困り感」を理解することが必要。問題が起こる原因や環境を考え、それを取り除くなど具体的に対処する。早期からの療育、訓練で十分に変化しうるので、家族で問題や不安を抱え込まず、第三者に相談してほしい。


アレルギー、ぜんそく

検査し誘因取り除こう

津山中央病院小児科部長 梶俊策

 日本人の3人に1人は何らかのアレルギーがあるといわれる。アレルギーは体が異物から身を守ろうとする反応で、多くは赤く腫れてかゆくなるのが症状。鼻炎、結膜炎、花粉症、じんましん、アトピー、気管支ぜんそくなどだ。季節の変わり目などに症状が出やすかったり、遺伝などもある。さまざまなきっかけがあるが、反応の仕組みを知ることが必要だろう。

 食物によるアレルギーは2歳を境に減り、以後はほこりなどの吸入によるアレルギーが増える。病院で皮膚や血液の検査を行い、食事や環境の誘因を取り除けば半数以上は治る。家族も含め前向きに取り組んでもらいたい。治療に自己判断や思い込みは危険。必ず受診してもらいたい。


小児外科疾患

切り傷 落ち着いて止血

国立病院機構岡山医療センター小児外科医長 岩村喜信

 子どもが転ぶと、口の中を切ることがある。まずはガーゼやハンカチを使って止血。出血が止まったら傷の深さを観察するが、口の中を縫う必要はほとんどない。その他の切り傷も落ち着いて押さえながら止血し、傷が大きかったり、目立つ場所の場合には病院を受診してもらいたい。

 やけどは程度によるが、病院へ急ぐより、まずは水道水で10~20分以上にわたって患部を冷やすことが大切。6カ月から1歳までに集中する誤飲や誤嚥(ごえん)は、家の中を片付けるなど家族が気をつけることで大半は防ぐことができる。万一の際には、病院で風船や磁石付きカテーテルを使い取り出す。ボタン電池などは胃に穴が開くこともあり、早めの処置が必要だ。


特別講演

「私の考える子育て論」

国立病院機構岡山医療センター院長 青山興司

 ここに一枚の写真がある。母親と乳を飲む赤ちゃんだ。母は子を見つめ、健やかに元気に育ってほしいと願いおっぱいをあげる。子は、自分の体を抱く母が手を離すとは思っていない。絶対的に信頼している。この愛情と信頼こそが人間関係の基本だ。

 子育ては、試練を伴うときもあるが、本来は楽しいもの。子育ての最中、子どもは多くのものを与えてくれる。それは医療も同じだ。ミルクを飲んで下痢が続き亡くなった乳児や体に残る手術痕(こん)に悩む女児が、新しい点滴の開発やあとが残らない手術法の必要性を教えてくれた。難題を乗り越えたとき成長できる。子どもは親にストレスを与えるが、苦労を乗り越えたとき喜びが訪れる。

 私の子育てへの願いは、心豊かに育ってほしい、人生を楽しめるように育ってほしいということ。そのためには生活習慣と人としての最低限のルールを教えるとともに、「ダメなものはダメ」と規制しなければならないことがある。また、子育てに決まった最良のゴールというものはない。強引に型にはめるのは良くない。

 人間は、ほ乳類の一種族。それを自覚するうえでも母乳育児を勧めたい。もちろん母乳も完ぺきでないが、人間の子どもは人間の乳で育つのが自然界の掟(おきて)だろう。人が威張り牛の乳で育てるなら、牛だって黙ってない。

 最後に、子育てを終えた女性ほど貴重な存在はない。積極的に“おせっかい”をしていただき社会全体で子育てをしよう。そして豊かな感性を持った子どもが育ってほしい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年11月25日 更新)

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