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人工股関節に大型ヘッド 岡山労災病院が積極導入 脱臼防止、耐用年数も長く

従来型の人工関節(左側)とラージヘッド製品の両方を置換した患者のエックス線写真

難波良文・人工関節センター長

 岡山労災病院(岡山市南区築港緑町)は、変形性股関節(こかんせつ)症や関節リウマチ患者らの治療に、従来の人工関節よりも脱臼しにくい「ラージヘッド人工股関節」を用いた置換手術に取り組んでいる。人工関節センター長を務める難波良文・同病院整形外科部長は「可動範囲が広く、脱臼の心配がなく動かせる意味は大きい。耐用年数の長さも期待できる」としている。

 岡山労災病院は、国内で4月に保険適用された人工股関節(米バイオメット社製)を国内でいち早く導入した。大腿骨(だいたいこつ)先端部(骨頭)の代わりをする人工関節の「ヘッド」と呼ばれる球形の金属部品が大きいのが特徴で、最大直径は58ミリと従来製品の1・5~2倍。手術時は患者本来の骨頭と同じ大きさのヘッドを用いる。

 従来のヘッドは最大でも直径32ミリ程度と、日本人成人女性の平均的な骨頭直径(40ミリ程度)よりも小さい。ヘッドが小さい場合、股関節を大きく曲げた際にヘッドを包む骨盤側の「カップ」のふちと、ヘッドから伸びる「ステム」がぶつかり、脱臼の原因の一つになっていた。製品や医療機関ごとに異なるが、2~10%の患者が手術後、脱臼に苦しんでいるという。

 難波部長は「本人の骨頭と同じ大きさのヘッドをはめることで、もともとの関節形態に近づけることができ、脱臼リスクは格段に低下している」と言う。

 また、可動部分すべてを金属製にして、従来品ではヘッドとカップの間にはめ込んでいた樹脂製の緩衝材を省いた。同じ材質(コバルトクロム)の金属部品を組み合わせることで摩耗を最小限に抑え、「個人差はあるが最低20年はもち、若い患者さんにも安心して使ってもらえる」と難波部長。

 同病院は4月から30症例以上を手掛け、これまでに脱臼した患者はいないという。骨盤がもろいなどの理由で適用できないケースもあるが、難波部長は「多くの患者さんに提案していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年07月06日 更新)

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