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統合失調症 広く理解を 岡山でフォーラム 医師、当事者ら取り組み報告 社会復帰へ欠かせぬ対話

体験談などを紹介しながら統合失調症への理解を訴えるパネリスト

 精神障害の中で最も多く、100人に1人の割合で発症すると言われる統合失調症。近年は副作用が少なく効果の高い薬が登場し、社会生活への道も広がってきたが、妄想や幻聴、それに伴う特異な症状などから、今なお偏見を持たれやすく、社会復帰の難しいケースも多い。10月下旬に岡山市内で開かれたフォーラム「こころの扉をひらく」(山陽新聞社後援)では、医師や当事者らが、仲間づくりや地域への働きかけなど、社会適応を進めるための取り組みを報告し、広く理解を訴えた。

 統合失調症など精神障害者の社会参加を促進する「精神障害へのアンチスティグマ研究会」(事務局・神戸市)が主催。岡山県内の統合失調症当事者や医療、福祉関係者ら約四百人が参加した。

 基調講演では、慈圭病院(岡山市)の武田俊彦診療部長が、治療の範囲が、幻聴など個々の症状だけでなく、病気に伴う対人コミュニケーションの問題など生活面のケアにまで広がっている現状を説明。「症状の重さと社会的な適応は必ずしも結びつかない」と指摘した上で「コミュニケーション技能などを身につけるリハビリを受けたり、本人の特性に適した仕事場をあっせんすることで、症状があっても再入院を防げる人が多い」と報告した。

 当事者ら八人の関係者によるパネルディスカッションでは、それぞれの体験を踏まえ、当事者の社会参加を促進するための課題について意見が交わされた。

 まきび病院(倉敷市)の精神保健福祉士・藤井伸彦さんは、患者が退院して地域に戻る時に町内会で反対する動きがあったが、話し合う場を設けたことで理解を得られた例を発表。「思い切って一歩踏み出せば前に進むこともある」と、当事者や医療関係者と地域との対話の重要性を訴えた。

 一方、医療機関自体にも偏見があるという指摘もあった。鳥取県で当事者の自助グループをつくる古川奈都子さんは、入院中に看護師から見下され冷たく対応された体験を紹介。「病気に関係ない人の方が案外温かく見守ってくれた」と話した。

 統合失調症はかつて精神分裂病と呼ばれ、「恐ろしい不治の病」というイメージが今も根強く残る。当事者にとっても病気であることを受け入れるのは並大抵ではない。

 高校の時に発病した古川さんは、その後結婚し出産も経験した。今は当事者たちの集まる会を催す。「何でも話せる仲間がいることは自分だけではないと思えるし、支えにもなるから」と、仲間づくりの重要性を訴える。

 地域で暮らしていて病状が悪くなった時はどうするか。当然、入院が必要になるケースもあるが、当事者には抵抗感が強い。県立岡山病院(岡山市)の中島豊爾院長は「何のために入院するのか。そのための治療プログラムが病院にちゃんとあるか。そうした見通しを持った上で入院することが望ましい」と話した。

 岡山県内では昨秋、当事者が自らの体験を語り、広く伝えることによって、社会の偏見除去を図るスピーカーズ・ビューロー岡山が発足。各地で講演など“語り部”活動を担っている。同会の吉沢毅会長は「病気や患者に対する正しい理解が広まり、病にあっても隔離されず、地域の中で生活していける社会であってほしい」と訴えた。

ズーム

 統合失調症 精神分裂病から2002年に呼称変更。幻覚、妄想、幻聴などの症状が現れる。厚生労働省の患者調査(02年)によると、全国で約73万人で、精神科系疾患全体(約258万人)の3割弱を占める。患者のうち約20万人が入院しており、退院に向けた方策が課題となっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月09日 更新)

タグ: 福祉精神疾患慈圭病院

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