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献身の精神継承 地域振興に足跡 三木記念賞・助成金

「医師として社会に貢献したい」と話す清水信義氏

 地域社会の発展に貢献した個人・団体を顕彰する「岡山県三木記念賞・三木記念助成金」の2009年度の受賞者(3人、4団体)が決まり、授与式が1日、岡山市中区古京町の岡山衛生会館で開かれた。

 個人を顕彰する三木記念賞は、行政部門が元岡山県議会議長の原寿男氏(80)、社会部門が岡山労災病院長の清水信義氏(69)、文化部門が書家の小野桂華氏(85)。

 団体が対象となる三木記念助成金は、社会部門が「明るいはだか祭りを守る会」、産業部門が農業機械メーカーの小橋工業、文化部門が岡山県吹奏楽連盟、国際親善部門が「こくさいこどもフォーラム岡山」。

 三木記念賞は「私なき献身」を貫き、岡山県の発展に尽くした故三木行治知事の功績をたたえて創設され、今回で42回目。ひたむきな努力を続けてきた受賞者に、これまでの歩みや喜びの声を聞いた。

記念賞 社会部門

岡山労災病院長 清水信義氏(69) 岡山市北区青江

肺がん手術2000人

 故三木行治知事は岡山大医学部の前身・岡山医科大の出身。偉大な先輩の名を冠した賞の受賞に「医師として社会に何ができるかという重い責務を感じている」と話す。

 外科医として約2000人の肺がん手術を実施。体に大きな傷を付けずに済む「胸腔(くう)鏡手術」も中国地方でいち早く導入し、2007年には日本対がん協会賞を受賞した。

 印象深いのは1998年に岡山大医学部第2外科教授として成功させた国内初の生体肺移植。長野県の女性=当時(24)=に母と妹の肺の一部を移植した。今でこそ50例を超え、移植医療をリードする同大だが、当時は成功率70%という中で決断に勇気がいった。

 「一刻を争う患者の状態や家族の思いに突き動かされた。今も女性が年賀状で『家事に仕事に忙しい毎日です』と近況を報告してくれるのがうれしい」

 岡山大病院長として病院改革に努めたほか、同大副学長も務め、法人化後の難しいかじ取りも担った。

 今、力を注ぐのが、診療中に起きた死亡事故の原因を究明する第三者機関の設立。そのモデル事業を昨年8月、中四国地方で初めて開始、代表になった。

 背景にあるのは、医療裁判の増加など医療側と患者・家族との関係の揺らぎだ。

 「最初の生体肺移植もリスクを含めて治療内容をしっかり説明して、向こうも信頼してくれたからこそできた。それを忘れずに安心・安全な医療体制を考えていきたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年09月02日 更新)

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