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新型インフル 重症化しやすい妊婦の対応   川崎医科大 下屋浩一郎教授に聞く

下屋浩一郎教授

 全国で本格的に流行している新型インフルエンザ。重症化しやすいとされる妊婦は、日ごろの予防や感染した場合にどのような行動を取ればいいのか。免疫などに詳しい川崎医科大の下屋浩一郎教授(産婦人科)に対応を聞いた。

 ―なぜ妊婦は重症化しやすいのか。

 「妊娠中は胎児を異物として排除しないよう免疫機能が低下する。このため病原体に対しても排除する働きが低下してしまうと考えられている。重症化のケースとしては肺炎が最も懸念されるほか、高熱によって発生する複数の物質が子宮の筋肉を収縮させることで、早産や流産のリスクが高まる。高熱が続くと赤ちゃんの発達に悪影響が出る恐れも指摘されている。新型インフルエンザに限らず感染症全般に気を付けてほしい」

 ―インフルエンザの症状が出た場合の対応は。

 「できるだけ早くタミフルなどの抗ウイルス薬による治療を始めることが大事。まずはかかりつけの内科医や一般病院に電話連絡して相談した上で受診してほしい。おなかの子どもが心配なのは十分理解できるが、かかりつけの産婦人科医を直接受診することは他の妊婦に感染を広げる可能性があるため、腹痛や出血などがない限り避けてほしい」

 ―抗ウイルス薬の副作用は。

 「特段の副作用は報告されていない。リスクよりもむしろ、抗ウイルス薬を服用することで早産や流産、重症化が防げるメリットの方がはるかに大きい。インフルエンザに感染したかどうか疑わしいケースであっても積極的に活用することを勧めたい」

 ―感染防止のために取るべき対応や心構えは。

 「国内では新型インフルエンザによる入院患者のうち妊婦は2%にとどまっている。早期治療をすれば重症化も防げるため、過剰な心配をする必要はない。日ごろから手洗いやうがいを心掛け、人込みを避けるなど気を配ってほしい。新型インフルエンザのワクチンが供給可能になったら、季節性と併せて予防接種を受けることが望ましい。どちらも胎児への影響は少ないと考えている」


 しもや・こういちろう 大阪大医学部卒。大阪大医学部助教授などを経て、2006年7月から現職。大阪府出身。49歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年09月22日 更新)

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