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第25回 岡山大病院② がん内視鏡治療 電気メスで一度に切除

食道がんの患者にESDを行う河原助教

白川靖博消化管外科助教

 小さなカメラやメスを体内に入れ、病巣を切除する内視鏡治療。岡山大病院では、広範ながん治療に取り入れられている。

 同大は内科、外科系医師らによる「光学医療診療部」を二〇〇三年に設置。初期の胃がんを中心に治療を進めてきたが、現在は食道がんと 咽頭 ( いんとう ) がんにも応用が進む。

 診断技術の向上で早期がんを発見しやすくなったことに加え、電気メスが付いた内視鏡で粘膜層の 腫瘍 ( しゅよう ) をえぐるように切り取る新しい治療法「内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD)」が普及。わっか状のワイヤをひっかけ絞るように焼き切る従前の手法に比べ、一度に切除できる範囲が広く、根治しやすくなった。

 「大きさに関係なく取り除けることが大きい」と消化管外科の白川靖博助教は言う。

 ピンポイントで治療できる利点を生かし、胃がん、食道がんに加え、国内数施設でしか行われていない咽頭がんでも、耳鼻科の協力を得て着手している。

 咽頭がんは手術だと声帯を取ってしまう例も多いが、ESDならば腫瘍だけなので声を失うこともない。既に約四十症例実施した。

 薄い粘膜層での治療だけに、正確な技術が求められる。消化器内科の河原祥朗助教は長さ五ミリの針状のメスをプラスチックで覆い、一方向でしか切れないように改良、安全性を高めている。

 河原助教は「進行がんでなければ、かなり大きな腫瘍でも根治できる。後遺症も少ないので、手術以外の選択肢として多くの人に知ってもらいたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年08月19日 更新)

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