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第26回 川崎医大病院② 食道がん手術 平井敏弘教授(消化器外科) 開胸せず合併症は軽い

食道がん手術について話す平井教授

 「可能な限り低侵襲で機能を温存し合併症の少ない手術」がポリシー。そこから生まれたのが食道がんの経横隔膜的食道亜全摘術。食道がんは首を切開し、食道にあるがん病巣を摘出、切除部分に代わる部位となる胃、腸を下からつなぐため、開胸、開腹し十時間前後かかる大手術。

 平井教授は開胸せずに行う。この手術の適用は下部食道、腹部食道にある早期のがんで、中縦隔にリンパ節転移していないケース。二〇〇三年からの手術は三十一例、手術時間は四時間十四分、出血四二〇ミリリットルで短時間、少出血。統計のとれたこの四年間の生存率は82・8%、ステージ1は100%、ステージ2、3は80%台。合併症の縫合不全は軽く、肺炎、気管切開はなく、神経まひは一時的。「切り開く部分がほぼ半減するので手術後の痛みや合併症は軽い。がん転移も明らかに少なくメリットは大」

 胃がん手術では早期の噴門がんに対し、胃をほとんど残す下部食道 括約筋 ( かつやくきん ) ・神経温存噴門部分切除術など、術後の患者の快適な生活を維持する合併症の少ない手術に挑戦している。長崎大医学部卒、広島大原医研腫瘍外科助教授を経て二年前から現職。日本胃 癌 ( がん ) 学会評議員。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年08月26日 更新)

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